2012-04-05 (木) | 編集 |
孫子 兵法 大研究!
本文注釈:孫子 兵法 大研究!
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『天地孰れか得たる、』:本文注釈
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天地-①天と地。天壌。あめつち。②宇宙。世界。世の中。③書物・荷物などの、うえした。ここでの「天地」の意は、大自然の法則であり、陰陽・寒暑の順逆の対応を利用した勝つための法則である「天」と、高下・広狭・遠近・険易・死生などの空間把握力の「地」で、合わせて「天地」となる。
得-①手に入れる。求めて自分のものにする。うまくかなう。②…できる。…しうる。動詞のあとにつくこともある。③理解して自分の身につける。さとる。④もうけ(をとる)。利益。 【解字】形声。右半部は音符で、「貝」(=財貨)+「寸」(=手)。財貨を手にする意。「彳」(=ゆく)を加えて、出かけて行って物を手に入れる意。
「得たる」の意を考えたとき、二つの意が考えられる。第一は「どちらの国が有利となる天と地を手にいれているか」と解釈する場合である。一般的にはこの意味でこれまで考えられてきた。第二は「敵と味方のどちらの将が天と地の特性をより理解し、体得しているか」と解する場合である。この場合は意味が大きく違ってくる。例えば有利な地形や難攻不落の要害があれば、そう簡単には覆ることはないが、歴史上覆らなかったものもない。そう考えれば、現状の状態云々よりも敵味方の将の能力がものを言ってくることは間違いない。兵法は相手に勝つためにあるのだから、勝利への道をつくることが大事となる。つまり現状が悪い状態でも策を練り実行することでよい状態をつくるということの方が重要になってくる。そう考えれば二番目の意味でとらえた方がよいかと思う。また第二の意味を採用したとき、前文の「将孰れか能なる」と意味合いが重複するが、後文の「兵衆孰れか強き」と「士卒は孰れか練いたる」を考えたとき、似たような意味の文章が二つ並んでいるため、「孫子」においてはさほど違和感がないものと思われる。
註
○天野孫子:「天地」は天地の恩恵の意。天は慈雨を降し、地は万物を生ずるような恩恵。この句は彼我両国のいずれが天地の恩恵にあずかりそれを活用して物資が豊富であろうかの意。一説に杜牧は「天とは上に謂ふ所の陰陽・寒暑・時制なり。地とは上に謂ふ所の遠近・険易・広狭・死生なり」と。この意であるならば、彼我両国の比較は広大に亘って困難であろう。仮に比較し得たとしても彼我両国に一長一短があって、その優劣の判断は困難であろう。また一説に杜佑は「両軍の拠る所を視て、誰か天時地利を得たるかを知る」と。これは、彼我両軍の既に拠る所を視てから天時・地利の彼我の優劣を比較する意であるならば、「之を校するに計を以てして其の情を索め」「吾此を以て勝負を知る」の開戦前の比較を否定する。これは、もし両軍の拠る所を仮定しての言であるならば、その拠る所は多くあり、またその地によっての天時の相異もあって、その比較は複雑多岐にわたろう。また一説に梅堯臣は「天の時を稽合し、地の利を審察す」と。稽合は考え合わせる。卜占によって、われに天時が幸するか否かは知ることができても、敵のそれについては知り得ないから、両者を比較することはできないであろう。古来注家は前文の天と地との説明をもって、この句の天と地とを解しているが、それは無理であろう。
○守屋孫子:三、天の時と地の利は、どちらに有利であるか。
○重沢孫子:第三は、前記”天”と”地”の諸条件が、両国のどちらにとってより有利であるかの比較。”得”は有利の意。
○諺義:天の時地の利、其の宜を得るやと、両軍の是非を較計する也。
○孫子国字解:天とは天の時、地とは地の利なり。前の五事の内にては、天と地を二箇條にしてあり、爰には一箇條につづめて云へり。天の時地の利をば、敵の方に得たるか、味方に得たるかとくらべはかることなり。天の時も、地の利も、主しを定めぬものにて、味方に得れば味方の利となり、敵方に得れば敵方の利となるゆへ、天地孰得たると云へり。敵味方孰れか得たると云意なり。五事の次第には、道天地将法と次第して、此處には道将天地と次第したることは、天地に逆ふて軍をすることはならねば、尤重きことなるゆへ、五事の時は、同じき地の利なるに、将のとりはからひ様にて、敵の利にもなり、又味方の利にもなるゆへ、天地を得ると得ぬとは、将の功不功にあるゆへ、爰には道将天地と次第を立たり。
○孫子評註:「天地孰れか得たる。法令孰れか行はるる。」-天地を合して一と為し、法に陪(くわ)ふるに令を以てして、以て相對す。
○曹公:天時・地利なり。
○李筌:天時・地利なり。[曹公=曹操 に同じ]
○杜佑:両軍據る所を視て、誰か天時・地利を得たるかを知る。
○杜牧:天とは上に謂ふ所の陰陽・寒暑・時制なり。地とは上に謂ふ所の遠近・険易・広狭・死生なり。
○梅堯臣:天の時を稽合し、地の利を審察す。
○王晳:天とは上に謂ふ所の陰陽・寒暑・時制なり。地とは上に謂ふ所の遠近・険易・広狭・死生なり。[杜牧に同じ]
○張預:両軍擧がる所を觀て、誰か天時・地利を得たるや。魏武帝 盛冬 呉を伐ち、慕容超 大峴に據らざれば則天時・地利を失う者なり。
意訳
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○浅野孫子:天と地がもたらす利点はどちら側が獲得しているか、
○金谷孫子:自然界のめぐりと土地の情況とはいずれに有利であるか、
○町田孫子:天の時と地の勢はどちらに有利であるか、
○天野孫子:いずれがよりよく天地の恩恵をうけて物資が豊富であろうか。
○フランシス・ワン孫子:気象・天候条件や地理的条件は、何れの軍の方に有利であるか。
○田所孫子:第三には天地のよろしさに敵味方のどちらがよりかなって準備が整っているかということ、
○大橋孫子:自然現象と地勢はどちらに有利か。
○武岡孫子:天候・気象条件や諸般の時間的要因、地理的条件はどちらの軍に有利か。
○著者不明孫子:時期や地勢のぐあいはどちらが有利であるか、
○学習研究社孫子:第三に、自然条件はどちらに有利か。
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天地-①天と地。天壌。あめつち。②宇宙。世界。世の中。③書物・荷物などの、うえした。ここでの「天地」の意は、大自然の法則であり、陰陽・寒暑の順逆の対応を利用した勝つための法則である「天」と、高下・広狭・遠近・険易・死生などの空間把握力の「地」で、合わせて「天地」となる。
得-①手に入れる。求めて自分のものにする。うまくかなう。②…できる。…しうる。動詞のあとにつくこともある。③理解して自分の身につける。さとる。④もうけ(をとる)。利益。 【解字】形声。右半部は音符で、「貝」(=財貨)+「寸」(=手)。財貨を手にする意。「彳」(=ゆく)を加えて、出かけて行って物を手に入れる意。
「得たる」の意を考えたとき、二つの意が考えられる。第一は「どちらの国が有利となる天と地を手にいれているか」と解釈する場合である。一般的にはこの意味でこれまで考えられてきた。第二は「敵と味方のどちらの将が天と地の特性をより理解し、体得しているか」と解する場合である。この場合は意味が大きく違ってくる。例えば有利な地形や難攻不落の要害があれば、そう簡単には覆ることはないが、歴史上覆らなかったものもない。そう考えれば、現状の状態云々よりも敵味方の将の能力がものを言ってくることは間違いない。兵法は相手に勝つためにあるのだから、勝利への道をつくることが大事となる。つまり現状が悪い状態でも策を練り実行することでよい状態をつくるということの方が重要になってくる。そう考えれば二番目の意味でとらえた方がよいかと思う。また第二の意味を採用したとき、前文の「将孰れか能なる」と意味合いが重複するが、後文の「兵衆孰れか強き」と「士卒は孰れか練いたる」を考えたとき、似たような意味の文章が二つ並んでいるため、「孫子」においてはさほど違和感がないものと思われる。
註
○天野孫子:「天地」は天地の恩恵の意。天は慈雨を降し、地は万物を生ずるような恩恵。この句は彼我両国のいずれが天地の恩恵にあずかりそれを活用して物資が豊富であろうかの意。一説に杜牧は「天とは上に謂ふ所の陰陽・寒暑・時制なり。地とは上に謂ふ所の遠近・険易・広狭・死生なり」と。この意であるならば、彼我両国の比較は広大に亘って困難であろう。仮に比較し得たとしても彼我両国に一長一短があって、その優劣の判断は困難であろう。また一説に杜佑は「両軍の拠る所を視て、誰か天時地利を得たるかを知る」と。これは、彼我両軍の既に拠る所を視てから天時・地利の彼我の優劣を比較する意であるならば、「之を校するに計を以てして其の情を索め」「吾此を以て勝負を知る」の開戦前の比較を否定する。これは、もし両軍の拠る所を仮定しての言であるならば、その拠る所は多くあり、またその地によっての天時の相異もあって、その比較は複雑多岐にわたろう。また一説に梅堯臣は「天の時を稽合し、地の利を審察す」と。稽合は考え合わせる。卜占によって、われに天時が幸するか否かは知ることができても、敵のそれについては知り得ないから、両者を比較することはできないであろう。古来注家は前文の天と地との説明をもって、この句の天と地とを解しているが、それは無理であろう。
○守屋孫子:三、天の時と地の利は、どちらに有利であるか。
○重沢孫子:第三は、前記”天”と”地”の諸条件が、両国のどちらにとってより有利であるかの比較。”得”は有利の意。
○諺義:天の時地の利、其の宜を得るやと、両軍の是非を較計する也。
○孫子国字解:天とは天の時、地とは地の利なり。前の五事の内にては、天と地を二箇條にしてあり、爰には一箇條につづめて云へり。天の時地の利をば、敵の方に得たるか、味方に得たるかとくらべはかることなり。天の時も、地の利も、主しを定めぬものにて、味方に得れば味方の利となり、敵方に得れば敵方の利となるゆへ、天地孰得たると云へり。敵味方孰れか得たると云意なり。五事の次第には、道天地将法と次第して、此處には道将天地と次第したることは、天地に逆ふて軍をすることはならねば、尤重きことなるゆへ、五事の時は、同じき地の利なるに、将のとりはからひ様にて、敵の利にもなり、又味方の利にもなるゆへ、天地を得ると得ぬとは、将の功不功にあるゆへ、爰には道将天地と次第を立たり。
○孫子評註:「天地孰れか得たる。法令孰れか行はるる。」-天地を合して一と為し、法に陪(くわ)ふるに令を以てして、以て相對す。
○曹公:天時・地利なり。
○李筌:天時・地利なり。[曹公=曹操 に同じ]
○杜佑:両軍據る所を視て、誰か天時・地利を得たるかを知る。
○杜牧:天とは上に謂ふ所の陰陽・寒暑・時制なり。地とは上に謂ふ所の遠近・険易・広狭・死生なり。
○梅堯臣:天の時を稽合し、地の利を審察す。
○王晳:天とは上に謂ふ所の陰陽・寒暑・時制なり。地とは上に謂ふ所の遠近・険易・広狭・死生なり。[杜牧に同じ]
○張預:両軍擧がる所を觀て、誰か天時・地利を得たるや。魏武帝 盛冬 呉を伐ち、慕容超 大峴に據らざれば則天時・地利を失う者なり。
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○浅野孫子:天と地がもたらす利点はどちら側が獲得しているか、
○金谷孫子:自然界のめぐりと土地の情況とはいずれに有利であるか、
○町田孫子:天の時と地の勢はどちらに有利であるか、
○天野孫子:いずれがよりよく天地の恩恵をうけて物資が豊富であろうか。
○フランシス・ワン孫子:気象・天候条件や地理的条件は、何れの軍の方に有利であるか。
○田所孫子:第三には天地のよろしさに敵味方のどちらがよりかなって準備が整っているかということ、
○大橋孫子:自然現象と地勢はどちらに有利か。
○武岡孫子:天候・気象条件や諸般の時間的要因、地理的条件はどちらの軍に有利か。
○著者不明孫子:時期や地勢のぐあいはどちらが有利であるか、
○学習研究社孫子:第三に、自然条件はどちらに有利か。
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