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孫子研究ブログです。孫子兵法は別名『孫子兵経』、『SUNTZU』、『The Art of WAR』ともよばれています。ナポレオンや毛沢東も愛読していました。注釈者には曹操、杜牧、山鹿素行、荻生徂徠、新井白石、吉田松陰、等の有名人も多いです。とにかく深いです。

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2012-05-03 (木) | 編集 |
孫子 兵法 大研究!

本文注釈:孫子 兵法 大研究!

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『勢とは、利に因りて権を制するなり。』:本文注釈

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二通りの解釈をしてみます。

①『軍隊の呼吸が合わさって一つになった大きな力とは、鋭利な刀のように研ぎ澄まされた感覚や動きと、また、まるで鉄砲の射撃の一瞬のような短い間に込められた爆発的な兵の気合い・機敏な動きによるもので、兵士の勢いを秤と重りに例えた場合、勢いよく秤を完全に傾けることができるのである。』

②『勢いとは、戦の結果を予測して有利となると判断した場合、その利にしたがった結果として、臨機応変の処置を取ること(常法に対する変法をおこなうこと)をいうのである。』

「勢」の言葉は勢篇にたびたび出てくる。『戦勢は奇正に過ぎざるも…』『水の疾くして石を漂わすに至る者は、勢なり。』『是の故に善く戦う者は、其の勢 険にして、其の節 短なり。』『勢は弩を彍るが如く、…』『勇怯は勢なり。』『故に善く戦う者は、之れを勢に求めて人に責めず。』『故に善く戦う者は、人を択びて勢に与わしむること有り。』『勢に与わす者は、其の人を戦わしむるや、木石を転ずるが如し。』『故に善く人を戦わしむるの勢い、円石を千仭の山に転ずるが如き者は、勢なり。』などが見える。この『其の勢 険にして…』の文から、「利」とは「険」と同義である可能性があることがわかる。「権」とは、秤と重りのことで、「勢」とは、木石や円石を山から転がすように、秤に重りが一気に加わり、秤が勢い良く傾く様子を指す。このことから、「権」とは「勢」と意味合い的には同じものであると理解できる。

勢-①他を押さえ従わせる力。いきおい。②自然のなりゆき。様子。③人数。兵力。④男性の生殖器。⑤「伊勢」の略。【解字】会意。上半部「埶」は「芸」(=藝)の原字で、草木を植える意。「力」を加えて、草木を植え育てる人の力の意。

利-①するどい。刃物の切れ味がよい。②役に立つ。役に立たせる。㋐効用がある。きく。好都合。よい。㋑うまく使う。㋒ためになるようにする。③もうけ。得。【解字】もと、刀部5画。会意。「禾」(=いね)+「刀」。いねを刃物で切る意。転じて、するどい意。

因-①もとづきよる。したがう。②物事を成立させるもと。③接続の助字。㋐ちなみに。その事に関連して。㋑よって。その結果として。④「因幡国」の略。【解字】会意。「囗」(=ふとん)+「大」。ふとんに人が「大」の字に寝た姿。下においたものを踏まえて、その上に乗る意。

権-①他人を支配する力・資格。いきおい。②はかりの分銅。おもり。はかり。③かり。臨機応変。間に合わせ。正官に準ずるもの。正道によらずに力だけに頼る意から、臨時の便法という③の意を生じた。【解字】形声。右半部「雚」が音符で、左右がそろう意。「木」を加えて、左右のバランスをとるさおばかりのおもりの意。転じて、他に影響を与える重み、重さをもつ力の意。

制-①ほどよく整える。(芸術作品を)つくる。②おさえつける。おしとどめる。支配下におく。③標準をととのえる。さだめ。㋐とりきめる。きまり。おきて。㋑天子の命令。みことのり。【解字】会意。「」(=小枝のある木)+「刀」。むだな小枝を切って樹形を整える意。



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○金谷孫子:第一段でのべた「五事七計」は、「戦わずして勝つ」兵法の常道であるが、それを守ったうえで、なおまた実戦にあたっての臨機応変の道としての詭道が必要であることをいい、第三段の発端とした。勢のことは勢篇第五に詳しい。

○浅野孫子:権-元来は天秤ばかり(権衡)で軽重を量るための重り(分銅)を指す。分銅は、天秤の傾斜を即座に逆転させることができる。ここではそうした原義を承けて、戦況を急変させ、にわかに勝敗を決定づける決め手の意味で使用されている。

○天野孫子:勢者因利而制権也-「権」ははかりざお。はかりざおは物に応じて適切にその軽重をはかることから、臨機応変の処置をするを言う。ここに勢を取り上げた理由について、一説に『摘語』は「五事と七計とは、軍陣の定まれる常の法なれば、味方、是を知れば、敵も又是を知る。たいたいなるべし。然れば如何せんと云ふに、此の五事七計の外に、勢と云ふ事あり。勢はきほひと云ふなり。敵に臨んで変化して、時のよろしきを見て、うちかつなり。是れは予(かね)て定めがたき故に、勢と云ふ。是の五事七計の常の法の外を、大将の一心に具して、眼をあく処なり。是れ孫子が本意なるべし」と。

○守屋孫子:権を制す-臨機応変に対応すること。

○大橋孫子:権を制す-権は天秤、さおばかり。状況に応じ適切に動く。

○武岡孫子:勢とは利に因りて権を制する也-「権」とは秤(はかり)の錘、分銅のこと。錘は衡の上におかれた物体の軽重に従い、適宜加減して権衡(バランス)をはかるのである。「利」とは利害のことである。つまり一見安定不変に見える国際状勢あるいは同盟、友好関係も、そこには動かす(制する)ことのできる利害関係があり、そこを衝いて自国に有利な状勢作為の謀略を行なう余地は常に存在するとの考え方である。

○佐野孫子:「権」は、もともと秤の錘りを指していたが、物の重さに応じて位置を移動し適切にその軽重をはかることから、臨機の処置あるいは変に応じるためにとる常道に反する処置等の意味に押し広められた。ここで「勢」とは、有利な態勢に因って、臨機応変に対処する(または機先を制する)を言う。この段は、戦略と戦術の一致、即ち、正鵠を射た理念と、それに基づく戦略と、それを首尾一貫して遂行する指導力の重要性を言うものである。

○フランシス・ワン孫子:一、「勢とは、利に因って権を制するなり」 この場合、「権」とは、秤器(はかり)の錘即ち分銅のことであり、錘は衡の上に在る物体の軽重に従い、適宜加減して権衡(バランス)をはかるのである。「利」とは利害のことである。曹操は「制するは権による。権は事に因って制するなり」と註しているが、その意は次の如くである。即ち、外征軍のための有利な状勢作為は、現在の均衡(権)を形勢している利害関係を制する-つまり、他の利害に因って現在の均衡を動かす-ことに由って可能となるが、それは、事(機略・権謀)に因って可能となるものである。と、要するに、一見いかに安定し不変であるかの如く思える国際状勢或いは同盟・友好関係であろうとも、そこには動かす(制する)ことの可能な利害関係が必ずあるのであり、従って、自国に有利な状勢を作為するための謀略の余地は常に存在するという考え方である。梅堯臣は「利に因って権(謀)を行い、以て之を制す」と註し、王晳は「勢とは其の変に乗ずる者なり」と。

○田所孫子:勢者、因利而制権也の権とは、表面からの正道でなくて裏の手のこと。もともとわが軍が有利であるので、激水の奔流するような側面工作も時の宜しきに相応じて裏手をつかって、相手国に働きかけるとの意。

○重沢孫子:”勢”なるものは、利益を利用して作り出された臨機応変の謀略である。

○諺義:此の一句は兵法の奇道を論ずる也。利とは右に云ふ處の計利ある也。五事七計の利あるに隨つてちなみて權を制する也。五事七計利あらずして權を制せんとせば、内謀正しからず、いづくんぞ外其の勢をなすことの全きことを得可けん乎。權は權道にして時にしたがふのはかりごと也。稱錘也と注して、はかりのおもり(錘)の所々にてかはりて、しかも其の宜にかなふの心也。權道のことは古今其の論多しといへども、きはめて云ふときは、大将才知ふかくして能く事變に通ずるを云ふ。事變に通ずるがゆゑに、時にとつて常にかはり、正にそむくことを用ふといへども、正法常理、則ち其の内に在る也。制は其の宜にかなふごとく裁斷してなすの義也。此の段に權の一字をいひ出して、以前之れを經するに五事を以てすの經の字と相應せしむ。五事は經にして常法也。勢は權にして事變權謀の術也、常法に拘泥せざるの意也。大全に云はく、勢は原と一定の所在無し。即ち勢の在る所、設(もし)利有りて我れ去らずんば、是れに因りて自ら其の勢を失ひ了る。故に能く利因らば則ち往くとして勢に非る無し。然して因は又一定の因る無し。又必ず利の中に於て、制して權變の術と為す。而して後利我が因と為り、勢我が握と為る。下面能にして不能を示すの十四事、正に是れ權を制する處、權は即ち利中變遷の機宜、制は即ち因中裁酌の妙用、因らざれば則勢得る能はず。權を制せざれば即ち利有るも亦因る能はず。全く一心の化裁上に在り。

○孫子国字解:勢は、利に因て其の權を制するなり-是は上の文に勢と云たるによりて、其勢と云は、如何様のことぞと、其わけを云へり。利と云は、上の文にある五事七計にてはかりて、此軍はかやうにして勝利ありと、つもり定めたる所を云ふ。因とは何事にても、それをもとたて土臺にして、其上へちなみてすることを云なり。權とはもと秤のをもりなり。秤のをもりは、左へ移し、右へ移し、様々に變じ易へて、宜しきに叶ふものなり。それゆへ何にても變じ換へ、轉じ移してよきぐあいにあたることを、權と云なり。制すとは制作の義にて、此方より作り出し、しかくることなり。兵の勢は、天より降るにも非ず。地より湧き出るにも非ず。此方より作り出して、将の掌に握り、全き勝をなすものゆへ、制と云なり。本文の心は、上文に勢と云ものをなして、内謀の助けとすると云、其勢と云は、如何様のことなれば、其五事七計にて、兼てつもりはかりて、是にて勝利あると定めたる處を、土臺とし、元として戦場に臨ては、それにちなみて、時に取ての變化よき圖にあたることを、此方よりしかくる、是を勢と云となり。尤五事七計にてつもりては、勝利なき軍なりとも、時に取てせで叶はぬこともあるべきなれば、左様なる軍には、勢を取て勝利を得ること、名将の作略にあるべし。されども孫子が心は、兵の正道を云なり。兵の正道にて云時は、名将の作略にて、何ほどよく勢をとりて軍に勝つとも前方五事七計にてつもりはかりて、利なきはずの軍を、無理にして、今勢の作略ばかりにて勝利を得るは、皆あぶなき戦にて、まぐれあたりとも云べし。兵家の全き勝には非ずと云意にて、因利と云たるなり。此篇は始計篇にて、出陣前の、始計こそ勝利の根元にてあれと、只是を大切に云たるなり。さて軍の上手の勝利を得るは、皆この勢にて、禍を轉じて福とし、まくべき軍に勝ち、さても奇策妙計かなと世にも云ひ傳へ、書にもしるして、後世にももてはやし、又孫子が妙處も此勢にあることなるを、かやうに云へる孫子が深意、よくよく味ふべし。あり難きことなり。又此因利と云を、敵の利、又は時にとりての利と見る説もあり。尤兵家の作略神妙なる處、みな敵の利に因りちなんで、味方の勝をなし、時に取て天地人の上にて、何によらず其事々の利にちなんで、兵の勢をなすことなれば、此説は孫子が妙意を得たる様なれども、一篇の文勢に疎くして、孫子が手厚き處をしらぬなり。深く思ふべし。

○孫子評註:「勢とは利(作戦計画上の有利な要件によって、戦場における情況の変化を味方にとって都合のよいように導くことである。)に因りて権を制するなり。」-是れ傳文(「伝」の意は、聖人の書を経といい、その注釈を伝という。)の小なるものにして、便を逐(お)ひて、上を括(くく)りて下を起す。而(原文にある而の字。)の字の斡旋(ここでは用い方の意。)、妙々(まことに、すばらしい。)。袁了凡(袁黄。明代の学者。字は了凡。『歴史綱鑑補』の撰者。)曰く、「經権の二字、一篇の眼骨なり」と。余謂(おも)へらく、計の字、經(常法。基本的な要件の意。)に根ざして權(変法。臨機応変の処置。)に入り、利に因りて權を制す。是れ勢に非ず、勢を為す所以の故のみ。兵勢篇を合せ攷(かんが)へて見るべし。下文の詭道十有四目は即ち是の物なり。

○曹公:制は權に由るなり。權は事に因りて制するなり。

○李筌:謀は事勢に因る。

○杜牧:此れに自り便ち常法の外勢を言う。夫れ勢とは先ず見る可からず。或は敵の害に因りて、我の利を見、或は敵の利に因りて、我の害を見る。然る後始めて機権を制して勝を取る可し。

○梅堯臣:利に因りて権を行い、以て之を制す。

○王晳:勢とは其の變に乗ずる者なり。

○張預:所謂勢とは、須らく事の利に因り、制して権謀を為し、以て敵に勝つべしのみ。故に先ず言う能わず。此れに自りて後、略して權變を言う。


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○金谷孫子:勢とは、有利な情況[を見ぬいてそれ]にもとづいてその場に適した臨機応変の処置をとることである。

○浅野孫子:勢とは、その時どきの有利な状況により従って、一挙に勝敗を決する切り札を自己の掌中に収めることをいいます。

○天野孫子:勢とはその有利に乗じて臨機応変の処置をなすことである。

○町田孫子:勢というのは、有利な状況にもとづいて、臨機応変の処置がとれる態勢のことなのです。

○フランシス・ワン孫子:そして、この状勢によって生じた好機に乗じて迅速に行動を起し、勝敗の主動権を掌握していかねばならない。

○大橋孫子:勢いというものは、合理的判断の上に立ち、情勢に応じ臨機応変の処置を行うところに生まれる。

○武岡孫子:そのためには、国際的な見地からの利害を調査推考しながら、状況にかなった謀略をよく考えて行なうことが必要である。

○著者不明孫子:勢いというのは、有利な状況に従って臨機応変の処置をとることである。

○学習研究社孫子:勢いとは、有利な条件に立脚して、とっさの変化の主導権を握ることである。

○佐藤堅司 孫子の思想史的研究:勢とは五事七計の利に立脚したうへで、権奇すなはち臨機応変の処置をとる。

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