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孫子研究ブログです。孫子兵法は別名『孫子兵経』、『SUNTZU』、『The Art of WAR』ともよばれています。ナポレオンや毛沢東も愛読していました。注釈者には曹操、杜牧、山鹿素行、荻生徂徠、新井白石、吉田松陰、等の有名人も多いです。とにかく深いです。

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2012-06-24 (日) | 編集 |
孫子 兵法 大研究!

本文注釈:孫子 兵法 大研究!

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『佚にして之れを労し、』:本文注釈 

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これまで二句を連続して解釈してきたので、この文もそのように解釈していく。

「佚而労之 親而離之」のこの文は、本来「用間」により敵を欺き、味方を有利にする方法を述べていたものと思われる。よって、「佚而労之」の意味は、
 ①敵軍が安佚の状態であれば、謀(計)をたてスパイを用いて疲れさせる。
 ②敵国が安佚の状態であれば、謀を用いスパイを活用して敵国の国家財政を疲弊させる、となる。
(注釈者の中には、孫子兵法の第一篇が「計篇」であるから、本来「比較・計算する」の意味で「計」の字が使われたのに、後の編纂者が混同して、「謀」の意味の「計」も同じ漢字であるからこの第一篇に「詭道」の文を後世加えたとする説を唱える者もいる。)
 このように、「佚する」と「労する」の対象になると考えられるのが、敵味方の「軍」と「国」である。ただしこの本文の解釈の仕方によっては「軍」と「国」の両方があてはまる場合もあるが、一方の意味でしか相応しくないと思われるものもある。
 「佚而労之」の文だけでは、何をもって欺き敵を労するのかはっきりとしないが、次の句の「親而離之」、つまり「敵国の君主と臣の仲を裂く」の意から考えてみると、君主と臣を引き裂くためには、敵国において活動することが最も効率的であると考えられることから、「間(スパイ)」を用いることで敵を欺き労することが、この本文「佚而労之 親而離之」の主旨と為り得ると思われる(あくまでこの二句を連続させて解釈した場合である)。よってこの本文の本来の意味は、『「間」を用いることで敵を「労する」のであって、軍隊の戦術によって敵を「労する」ということではない』と考えられる。いずれにせよ、「間」を用うるも用いずとも、謀(計)を用いて敵を欺き、味方を有利に導くというのが、この本文の真意となるであろう。
 
 兵を起す算段となった場合、自軍の側にとって、敵が「佚」の状態は好ましくないものであるし、敵が「労」の状態であればよりいっそう敵を攻略しやすくなるものであるから、ここの本文の意味は、「佚なれば之れを労す」でよいと思われる。次句の「親而離之」の解釈も、同様に「親なれば之れを離す」でよいだろう。ここでの「佚」と「労」も反義語同士として捉えて間違いないと思う。
 
 さて、「佚而労之」の文もいろいろ解釈が可能である。
 ①「佚にして之れを労す」と読んだ場合、自分を安逸の状態にしておいて、敵を疲れさせる、となる。
 ②「佚なるも之れを労せしむ」と読んだ場合、自分は本当は安逸の状態でありながら、敵に疲労した状態に見せかける、となる。
 ③「佚なれば之れを労す」と読んだ場合、敵が安逸の状態にあれば、疲れさせる、となる。
 ④「佚なれば之れを労せしむ」と読んだ場合、敵が安逸の状態であれば、味方を疲れた状態にみせかけて、敵を誘い込む、となる。
 以上がこの文の解釈として相応しいと考えられるものである。

 豊臣秀吉は城攻めにおいてこの「佚而労之」が大得意であった。敵に「佚」の状態を示して敵を疲れさせるといった戦法としては、敵城を味方が多数で囲んだ上で、芸者を呼び踊ったり、茶会を開いたり、妻妾を国元から呼び寄せたりするなど、敵には絶対できずに羨ましがられるようなことをよくおこない敵の士気を下げた。また、敵が佚ならば疲れさせるといった戦法としては、敵を兵糧攻めにするために、敵が戦のため金銭が入用だからとその機に乗じ、敵の城に備蓄されている兵糧を自分の息がかかった商人にわざと高値で買い取らせることで、敵にもっと儲けたいからと調子に乗らせ必要以上に備蓄米を吐き出させることで、兵糧攻めをしやすくするという深謀遠慮の策がみられた。これ以外にも、夜に鬨の声をあげ、敵の城兵を眠らせないようにし疲れさせるということもおこなっている。
 このように、謀は相手に対し千変万化するものであり、一定のものではない。また「佚而労之」を含む「謀(計)」は「五事・七計」(彼を知り己を知る)の上に成り立つものであり、絶対にこの大原則を踏み外してはならないのである。

 私見を述べさせてもらえば、この二句は、後世付け足された文であると思われる。この二句は「竹簡孫子」に記載されていないのが一つの理由である。また現行の「孫子」が「用間篇」を末篇としているのに対し、「竹簡孫子」では「火攻篇」が十三篇の末篇となっており、後世において「用間篇」が末篇に移換された可能性がある。その移換に伴って「用間篇」が重視されるようになってからこの本文が追加されたか、また、何者かが歴史における出来事や自らの経験則をもとにして元の本文にこの二句を付け足し、その二句を付け足された「用間」を重視する「孫子」を再編者がみて、「孫子」の末篇には「用間篇」こそ相応しいと考え、「火攻篇」と「用間篇」を入れ替えたかのいずれかではないか、と思われる。


佚-①気ままに楽しむ。②しまりがない。みだら。③所在がわからなくなる。失う。④世をのがれる。「逸」と同意。

逸-①のがれ去る。走り去る。とりにがす。②世間から隠れる。所在が分からなくなる。③それる。きまりからはずれる。㋐気ままに楽しむ。㋑わがまま。【解字】会意。「辶」+「兔」(=うさぎ)。うさぎが手からすりぬけて逃げ去る意。転じて、一定のわくからはずれる意。

労-①力をつくして事にあたる。はたらく。骨折り。②骨折ってくたびれる。心や体をつかれさす。苦しみ。③つかれをねぎらう。いたわる。【解字】会意。「熒」(=かがり火)の省略形+「力」。火を燃やし尽くすように力を尽くす意。



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○天野孫子:佚而労之-わざと安逸に見せて、敵を苦労させる。一説に敵にゆとりがあって安泰であれば、これを苦労させると。『諺義』は「彼みだりに動かず、安んじて兵をつからかさざる時は、手立を設けて彼がつかるるごとくならしむ」と。虚実篇に「敵佚すれば能く之を労す」と。一説に「佚して之を労す」と読み、梅堯臣は「我の佚を以て彼の労を待つ」と。これは詭道にならない。

○フランシス・ワン孫子:一、「佚に対しては之を労す」の意である。「佚」は安逸の逸に通じ、敵が安定或いは余裕・安全の状態に在ることである。「労す」とは、その安定した状況・地歩に在る敵をゆさぶって奔命に疲れしむることを言い、虚実篇では「敵、佚なれば能く之を労す」と言っている。しからば、いかにして労するのか。曹操曰く「利(害)を以て之を労す」と。
 一、戦わんと欲する者は、優勢・劣勢の如何を問わず、すべからく敵を労するの方策を講じ、その地歩の安定・強化を妨げねばならないのである。たとえば、中共軍は、我軍と国民党軍に対する戦いに於て、ゲリラ戦を用いることによって奔命に疲れしめ、当初の劣勢を覆して優勢に立つことに成功している。また、米軍も、太平洋の戦場に於ける反攻開始までの間を、漫然と手を束(つか)ねて、我軍の防衛態勢の強化を許すものではなかった。我軍の能力の限度を越えた過大進出・過剰展開の欠陥を咎めた彼は、潜水艦・航空機・奇襲部隊を多用して我が虚に乗ずる作戦を展開、我軍の弱化を図る一方、自軍の反攻に有利な形勢をつくりあげている。ところで、日・中戦争、大東亜戦争の何れの場合も、我軍は、初期作戦に於ては圧倒的な成果を収めながら、その後は忽ちにして主導権を敵手に委(い)する者となり、その労する所となって敗退しているわけであるが、注目すべきは、これが決して初めてではないことである。秀吉の朝鮮戦役に於ても、また遡れば古代日本の朝鮮経営に於ても、同じパターン、同じ推移を辿って総撤退に至っていることである。考うべきであろう。今や、我々は、無敵の経済力に驕りはじめているが、関係諸国に惑わされて、労する者とならねば幸である。

○守屋孫子:休養十分な敵は奔命に疲れさせ、

○田所孫子:佚而労之とは、相手方が安佚を好むときは、いよいよ安佚を楽しませるようにしむけて、たわむれ遊びつからせるとの意。

○重沢孫子:怠慢を装うことによって、敵を不安がらせ疲労させる。

○大橋孫子:佚-安楽にして体力充実

○武岡孫子:佚なれば-安楽にして給養、休養十分

○佐野孫子:佚而労之-「佚」は安逸の逸に通じ、敵が安定或いは余裕・安全の状態に在ることを言う。

○著者不明孫子:【佚而労之】 「佚」は労の反対。逸と同じ。安逸。楽をすること。「労」は疲れる、疲れさせる。

○孫子諺義:「佚するときは之れを労し、」 かれみだりに動かず、やすんじて兵をつからかさざるときは、手立てをまうけてかれがつかるるごとくならしむ。彼れ陣を堅うして兵を休し、相對して動かざるがごときときは、或は兵は其の左右にはたらかしめ、敵地を放火せしめ、刈田せしめ、民家を亂暴亂取せしめて、かれをつからかすの手段を設くべき也。或はあへしらひ、勢或はかくれあそびを用ひて、彼れ出づれば引取り、かへれば我れ出で、左を救へば右をうち、右を救はば左をうつ、皆是れ佚するときは之れを労すなり、孫子が力を治むると云ふの術是れ也。又梅堯臣の注に、我の佚を以て彼の勞を待つ云々。

○孫子国字解:「佚するをば之を勞らかし」 佚するとは安逸なり。敵の上下安逸なれば、兵の力全くして、破れがたき國なり。然らば方便を以て是をつからかすべし。昔呉の公子光と云大将、楚國を伐つべき謀を、伍員に尋ねたりければ、伍員が謀にて、軍兵を三手に作り、二手をばかくしおき、一手の軍兵を以て、楚國の境へ働き入り、楚より是を打拂(うちはらわ)んとて、人數を出せば引き、敵引たりとて、楚の軍兵引けば、又打て出て、楚又出れば其まま引き、一年の内に七度まで懸け合たり。終りに楚國の疲れたるを見て、三手の軍兵一度に起りて、是を破りしことなども、此本文の意なり。

○曹公:利を以て之れを勞す。

○李筌:敵佚にして我れ之れを勞す者は善功なり。呉 楚を伐つ。公子光 計を伍子胥に問う。子胥曰く、三師を為し以て肄(なら)[①学習する。練習する。②苦労。骨折り。③切り株から生え出た芽。ひこばえ。]う可し。我一師至る。彼れ必ず衆を盡して出づ。彼れ出づるとき我れ歸る。而して肄(い)を以て之を疲れしむ。多いに方(まさ)に以て之を誤らしむ。然る後三師以て之を繼(つ)ぐ。必ず大いに克たんとすれば、之に從わん。楚是に於いて始めて呉に病むなり。

○杜牧:呉 公子光 楚を伐つに伍員に問う。員曰く、三軍を為し以て肄う可し。我れ一師至る。彼れ必ず盡して出づ。彼れ出づれば則ち歸る。亟(すみやか)に肄を以て之を疲れしむ。多いに方に以て之を誤らしむ。然る後三師以て之を繼ぐ。必ずや大いに克たんとすれば、之に從わん。是に於いて子 重ねて一歳に七奔命[ほん‐めい【奔命】①君命に従って奔走すること。②いそがしく活動すること。]す。是に於いてや始めて呉に病む。終に郢に入る。後漢末曹公既に劉備を破る。備 奔るとき、袁紹兵を引くとき、曹公與(とも)に戦わんと欲す。別に駕[馬・馬車に乗る。乗り物をあやつる。乗り物。]す田豊[田豊は、沮授と並ぶ袁紹軍の二大知将と評することができる。曹操は、もし袁紹が田豊の献策を用いていたら、自分と袁紹の立場は全く逆のものとなっていたであろうと語っており、『三国志』魏書袁紹伝の注によると、歴史家の孫盛は、「田豊と沮授の智謀は張良、陳平に匹敵する」と賞賛している。田豊は、袁紹に先見性のある進言を何度もおこなったが、剛直な性格で歯に衣着せぬ厳しい発言をしたため、次第に袁紹に疎まれるようになった。この点については、曹操の参謀である荀彧が「剛情で上に逆らう」と指摘した通りである。また、『三国志』の注釈者である裴松之も「主君を誤ったがために忠節を尽くして死ななければならなかった」と慨嘆している。]曰く、操 善く兵を用いるに、未だ輕擧す可からず。如らざれば久しきを以て之を持つ。将軍山河の固に據るに、四州の地に有り。外に英豪を結び、内に農戦を修めて、然る後其の精鋭を揀(えら)ぶ。分けて奇兵を為す。虚に乗じて迭(かわ)りて出づるに以て河南を擾(みだ)す。右を救わんとすれば則ち其の左を撃つ。左を救わんとすれば其の右を撃つ。敵をして奔命に疲れ使む。人 業に安ぜず。我れ未だ勞せず。而して彼れ已に困るなり。三年及ばざれば坐して克つ可きなり。今廟勝の策を釋(す)て成敗一戦に決す。悔いて及ぶこと無し。紹 従わざる故に敗る。

○梅堯臣:我れの佚を以て彼れの勞を待つ。

○王晳:奇兵を多くするなり。彼れ出づれば則ち歸る。彼れ歸らば則ち出づ。左を救わば則ち右、右を救わば則ち左、以て勞して之れを罷む所以なり。

○何氏:孫子 力を治むるの法有り。佚を以て勞を待つ。故に論じて敵 佚なれば我れ宜しく多いに方(まさ)に以て之を勞弊すべし。然る後以て勝ちを制す可し。

○張預:我れ則ち力全きにし、彼れ則ち道に敝(やぶ)る。晉楚 鄭に爭う。久しくして決せず。晉の知武子 乃ち四軍を分ちて三部を為す。晉各(おのおの)一動す。而して楚に三來たる。是に于(ゆ)き三駕して、楚之れと爭う能わず。又 申公巫臣 呉 楚を伐つを敎え、是に於いて子 重ねて一歳に七奔命すは是れなり。


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○金谷孫子:[敵が]安楽であるときはそれを疲労させ、

○町田孫子:安楽にしているものは疲労させ、

○天野孫子:わざと安逸におるように見せて敵を苦労させたり、

○フランシス・ワン孫子:常に行動を強要して、敵を疲労困憊(ぱい)させよ。

○大橋孫子:敵が楽をしているときには、謀を用いてこれを疲労させる。

○武岡孫子:また敵がゆったりしているときは、夜な夜なゲリラを出没させて敵を寝かせず疲れさせる。

○著者不明孫子:楽をしていれば疲れさせ、

○学習研究社孫子:敵が安佚な状態の時は、疲れるようにしむける。

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