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孫子研究ブログです。孫子兵法は別名『孫子兵経』、『SUNTZU』、『The Art of WAR』ともよばれています。ナポレオンや毛沢東も愛読していました。注釈者には曹操、杜牧、山鹿素行、荻生徂徠、新井白石、吉田松陰、等の有名人も多いです。とにかく深いです。

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2013-01-05 (土) | 編集 |
孫子 兵法 大研究!

本文注釈:孫子 兵法 大研究!

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『国の師に貧なるは、遠き者遠く輸せばなり。遠き者遠く輸さば則ち百姓貧し。』:本文注釈

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貧-①財産・収入がとぼしい。まずしい。②足りない。みすぼらしい。【解字】形声。「貝」(=財貨)+音符「分」(=わかれる)。財貨が分散して少ない、まずしいの意。

輸-①(車で)物を運ぶ。別の所へ移す。送りとどける。②まける。やぶれる。ばくちに負けて、かけ金が他者の手にうつる意。【解字】形声。「車」+音符「兪」(=移す)。車で別の場所に運び移す意。

百姓-ひゃく‐しょう【百姓】‥(ヒャクセイとも)一般の人民。公民。





○天野孫子:○国之貧於師者遠輸  「国」は一国、国家の意。一説に「国」と下の「百姓」とを同一視して『新釈』は「この遠輸の為に民百姓が貧乏するから、従って国家が貧乏するといふのである」と。「師」は多くの人々。ここでは大軍。「貧於師」は大軍のために貧窮する。「遠輸」は食糧などの軍用品を輸送すること。なにを輸送するのか、この文から明確に知り得ないが、一応食糧などの軍用品と解する。『新釈』は「兵糧・武器等を遠征軍の出先へ輸送すること」と。
 ○遠輸則百姓貧  「百姓」は庶民。百姓が遠輸で貧窮するのは、物資を輸送して百姓の物資が欠乏するからであろう。一説に『諺義』は「人民遠所にいくさだち致し、用器を運び道路につかはれて百姓ことごとく貧しくなるなり。…是は国中の百姓の役に苦しみ貧しくなるの故を云へり」と。

○フランシス・ワン孫子:註 「百姓貧し」の言、孫子の声調には真に悲痛なものがある。戦争特に長期戦は、必ず重税を伴う。重税と労役は忽ち国民を疲弊させ、それは軍隊の基盤を危うくする。ドゴールは「軍隊の士気が決定するのである」(剣の刃)と。

○守屋孫子:戦争で国力が疲弊するのは、軍需物資を遠方まで輸送しなければならないからである。したがって、それだけ人民の負担が重くなる。

○田所孫子:○国之貧於師者、遠輸とは、国家が軍隊を動かすことによって財政窮乏に陥るのは、軍需品を遠方の戦場に輸送するからであるとの意。

○重沢孫子:国が軍隊を動かしたために貧しくなるのは、物資の遠距離輸送による。遠距離輸送をやると、百姓(身分なき庶民)は貧困化する。

○佐野孫子:【校勘】遠者遠輸、遠者遠輸則百姓貧  「十一家註本」、「武経本」では「遠輸、遠輸則百姓貧」と作るが「竹簡孫子」には「遠者遠輸則百姓貧」とある。中国「銀雀山漢墓竹簡整理小組」編の『孫子兵法釈文校註』(以下「釈文校註」と言う)によれば、「通典」では「遠師遠輸、遠師遠輸者則百姓貧」と作るため、これを校勘するに「竹簡孫子」の「遠者遠輸」四字の右側残欠部分に反復記号(これは竹簡中かなりの頻度で散見される)が附されていた疑いがあるとする。それによれば本句は「遠者遠輸、遠者遠輸則百姓貧」と読まれる。この方が文意がより明確となって適当であるため、ここではこの説に従って改める。因みに「通典」の「遠師遠輸」は次句の「近師者貴売」を意識して改めたものと思われるが、この「近師」は「遠師」に対するものではなく「近市」の意と解せられること、又、戦争遂行のための物資の大量調達による物不足は遠師、近師を問わず起こるものであるから、その意味で「遠者」を「遠師」とするのは適当ではない。

○著者不明孫子:【貧於師】戦争のために窮乏する。「師」は軍隊。ここでは戦争。
 【遠輸】「輸」は輸送する。

○孫子諺義:『國の師に貧しき者は遠く輸(いた)せばなり。遠く輸すときは則ち百姓貧し。師に近き者は貴(たか)く賣る。貴く賣るときは則ち百姓の財竭く。』
 輸は運也、云ふ心は、師を起すの國は、必ず財用貧しきもの也。そのゆゑは、人民遠所にいくさだちいたし、用器をはこび道路の運送につかれて、百姓ことごとくまど(貧)しくなる也。遠く輸すとは、遠方へ物をもちはこび往來いたすを云へり。是れは國中の百姓の役にくるしみまどしくなるのゆゑをいへり。さて師場にて云ふときは、四方よりあつまる處の商買人、軍場へ出でて買賣せしむるは、命をすてて交易を事とするゆゑに、諸色常のあたひに十倍す。是れ師に近き者は貴く賣る也。たとひたかしといへども、其の物其の品によつて買ひとらざれば叶はざるがゆゑに、下々ことごとく財を失つて財竭くるにいたる也。是れ外軍場において雑兵諸人のつひえ也。凡そ戦場へのぞむもの、兵士は少くして雑兵下人多し。兵士は諸國よりのあつまり勢あり、雑兵下人は皆國内の百姓也。ことに異國は農兵と號して、百姓の内より役にて兵士をこしらへ出すゆゑに、兵士も所の百姓也。この段の百姓は兵士雜人ともにかけて、見る可き也。大全に云はく、遠輸の害は、孫子の言、其の詳盡を極むと謂ふ可し。然りと雖も猶ほ言ふ可き也。唯だ中途接せざれば、則ち師に近き者必ず貴く賣る。貴く賣るときは軍に於て買はざるを得ず。但し軍に於て價一分を加ふれば、即ち民に於て賦一倍を加ふ。而して百姓の財竭く。勢必ず丘役(春秋時代の賦税。次節に出づ)供給の家に急にす。又云はく、古くは兵民分れず、故に三軍財竭くと言はずして、百姓財竭くと曰ふ、丘役供給の人、自然意を要す。

○孫子国字解:これより下、十去其六と云までは、又前の意を反復して、遠境へ軍を出すこと、上下共に費多きことを云て、十去其七と云までは、其内にて取りわきて下の疲れを云、この一段は、下の費の内にて、領内の疲れを云なり。國とは領分の民を云。貧於師とは、軍陣あるゆへに、勝手あしくなることなり。遠輸とは遠國へ兵糧をはこぶことなり。領分の民の軍陣ゆへに、勝手あしくなり、貧乏すると云は、遠國へ兵糧を運ぶ故なりと云意なり。尤近境にて戦ふも、事なきにはしかざれども、遠國へ兵糧を運ぶこと、民の大きなる愁なる故、かく云へり。遠輸則百姓貧とは、遠國へ兵糧を運ぶ時は、領分の民百姓、かならず貧困するなり。

○孫子評註:『國の師に貧しきは遠く輸すればなり(軍隊のために国が貧しくなるのは、兵糧を遠方まで輸送するからである。)。遠く輸すれば則ち百姓(人民)貧し。』
 又尋常の兵略を説くこと一番。上の軍食より遠輸を拈出(文句などを考え出すこと。)(ねんしゅつ)し、文反(かえ)つて前と犯さず。

○孟子:兵車 千里の外に轉運すれば、財則ち道路に費やし、人困窮する者有り。

○李筌:兵役數た起りて、賦斂[ふ‐れん【賦斂】税を割り当ててとりたてること。]重し。

○杜牧:管子曰く、粟三百里行けば、則ち國一年の積無し。粟四百里行けば、則ち國二年の積無し。粟五百里行けば、則ち衆飢色有り。此れ粟重き物軽きを言うなり。推移する可からず。之れ推移すれば則ち農夫耕牛俱に南畝[①せ。耕地面積の単位。一畝は一反の十分の一。三十歩。約一アール。周代には百歩を一畝(ぼう)とした。②畑のうね。【解字】会意。「亠」(=十)+「田」+「久」(=あし。あるく)。十歩あるいて測る十歩平方(=百歩)の田畑の面積を表す。]を失う。故に百姓貧しからざるを得ざるなり。

○賈林:遠輸すれば則ち財道路に耗(へ)らし、轉運に弊し、百姓日(ひび)に貧し。

○張預:七十萬家の力を以て、十萬の師を千里の外に供せば、則ち百姓貧しからざるを得ず。


意訳
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○金谷孫子:国家が軍隊のために貧しくなるというのは、遠征のばあいに遠くに食糧を運ぶからのことで、遠征して遠くに運べば民衆は貧しくなる。

○浅野孫子:国家が軍隊を起こしたために貧しくなる原因は、遠征軍が遠くまで補給物資を輸送するからである。遠征軍が遠方まで補給物資を輸送すれば、その負担に耐えかねて、民衆は生活物資が欠乏して貧しくなり、

○町田孫子:国家が戦争のために窮乏するのは、遠征して遠くまで食糧を運ばなければならないからである。遠征して遠くまで食糧を運べば民衆は貧しくなる。

○天野孫子:国家が大軍のために貧窮するのは、遠方に食糧などの軍用品を輸送するからである。遠方に食糧などの軍用品を輸送すれば、国民は貧窮する。

○フランシス・ワン孫子:国家が戦争のために窮乏するのは、遠距離に輸送するのが原因である。遠隔の戦地に対する補給は国民を疲弊させる。

○大橋孫子:戦争で国が貧しくなるのは遠征して、輸送距離をのばすからである。輸送距離がのびれば国民は貧窮する。

○武岡孫子:国の財政が窮迫するのは、遠征部隊の食糧を運ぶからで、税金を払う民衆は貧しくなる。

○著者不明孫子:国が戦争のために窮乏するのは軍糧を遠くまで運ぶためで、遠くまで運べば民衆は困窮する。

○学習研究社孫子:国家が軍隊のために貧しくなるというのは、食糧や資材を遠くへ輸送するためである。遠くへ物資を輸送すれば、臣下や人民は貧しくなる。

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