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孫子研究ブログです。孫子兵法は別名『孫子兵経』、『SUNTZU』、『The Art of WAR』ともよばれています。ナポレオンや毛沢東も愛読していました。注釈者には曹操、杜牧、山鹿素行、荻生徂徠、新井白石、吉田松陰、等の有名人も多いです。とにかく深いです。

孫子 兵法 大研究!トップ⇒スポンサー広告⇒『故に車戦に車十乗已上を得れば、其の先ず得たる者を賞し、而して其の旌旗を更め、車は雑えて之れに乗らしめ、卒は共(もてな)して之れを養わしむ。』:本文注釈孫子 兵法 大研究!トップ⇒本文注釈:孫子 兵法 大研究!⇒『故に車戦に車十乗已上を得れば、其の先ず得たる者を賞し、而して其の旌旗を更め、車は雑えて之れに乗らしめ、卒は共(もてな)して之れを養わしむ。』:本文注釈
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2013-02-18 (月) | 編集 |
孫子 兵法 大研究!

本文注釈:孫子 兵法 大研究!

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『故に車戦に車十乗已上を得れば、其の先ず得たる者を賞し、而して其の旌旗を更め、車は雑えて之れに乗らしめ、卒は共(もてな)して之れを養わしむ。』:本文注釈

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 この文のポイントは、①「其の先ず得たる者を賞し」と、「車は雑えて之れに乗らしめ」の②「之れ」と、③「卒は共して之れを養わしむ」をどう訳すかである。
 ①の「其の先ず得たる者を賞し」の「賞し」とは功のある自軍の兵士に使う言葉であろう。例えば敵の投降兵に金銭を与える場合は「賞する」とは言わずに、「与える」などという言葉を使うはずである。よって、この文は「最初に敵の戦車十乗以上を得た自軍の功有る者を賞するのである」、という意味のものであろう。
 次に、②の「車は雑えて之れに乗らしめ」の文であるが、これは「敵から奪った戦車と自軍の戦車とそれぞれに自軍の兵士を乗せて」という意味に解するやり方と、もう一つ「味方の戦車に敵の投降兵を混ぜて乗らせて」とする解釈がある。この解釈について私見を述べさせてもらうと、当時戦車には三人しか乗るスペースはなかったことから、「味方の戦車に敵の投降兵を乗せる」という解釈は全くあり得ないものであると思う。よって、この文は、「敵から奪った多数の戦車と、もともとあった自軍の戦車と混ぜて自軍の兵士が活用する。」という意味になると解したほうがよいだろう。
 さて、次の③の「卒は共して之れを養わしむ」であるが、この解釈は大きく二つに分かれるであろう。一つは、「共」を「ともにする」と訳す場合である。この場合、「敵の投降兵は自軍の兵士と飲食などの待遇を同じにする。」というような意味となり、投降兵を自軍に組み入れることを前提とした文となる。前に出てきた本文の「敵を殺す者は怒なり。」の、「怒」を否定的に捉えた場合(「怒」は愚かな感情であるからむやみに敵を殺してはならない、とする説)、「共」を「ともにする」と訳した方が、より文意が一貫としてつながる。しかし、わたしは「怒」を肯定的に捉えたほうがより自然であると思うため、この「共」を「ともにする」というようには訳さない。ではどう訳すかであるが、ここは浅野裕一さんの、「共」を「供(「饗」の代用字)」の意としてとらえる説をとる。つまり「共」を「もてなす」という意味として捉えると非常にうまくいく。そうすると、この文は「功の有った自軍の兵士(卒は低い身分の者であろう)には、酒食を供応する場を提供してもてなし自由に飲食させる。」という意味となる。

 ここで、「養」の字の意味についてもう少し深く考察してみたいと思う。「養う」は原義から考えれば「ごちそうを食べる」、または「ごちそうを与える」の意となる。しかしその意味では、ここの「卒は共して之れを養わしむ」の文では、「共(もてな)す」と「養わしむ」がほとんど同意となり、意味が重複してしまう。それでは、他に何か適当な意味が考えられないか、過去の文献から探してみると、『論語』の第十七 陽貨篇に、「子曰わく、唯(ただ)女子と小人とは養い難しと為すなり。これを近づくれば則ち不遜、これを遠ざくれば則ち怨む。」と見える。この意味は、「先生は言われた。「女子と小人とだけは取り扱いにくいものだ。親しみ近づけると無礼になり、疎遠にすると恨みをいだくからね。」」となる。ここでの「養う」の意味は「取り扱う」という意味になる。この「取り扱う」の意味を、『孫子』の「卒は共して之れを養わしむ」にも適用すれば、「功の有った自軍の兵士(卒は低い身分の者であろう)には、酒食を供応してもてなして取り扱うようにする。」、となり自然な文意となる。


旌旗-せい‐き【旌旗】はた。のぼり。

更-①あらたまる。あらためる。かわる。かえる。こもごも。かわるがわる。②夜がおそくなる。ふける。日没から日の出までの一夜を五等分したそれぞれの時刻の呼び名。③さらに。㋐そのうえに。一段と。㋑けっして。いっこうに。【解字】もと、曰部。会意。「丙」(=ぴんと張る)+「攴」(=動詞の記号)。ゆるんだものを張ってぴんとさせる、転じて、あらためる意。

雑-①種類のちがったものが入りまじる。まざる。まぜる。②まざって整理されていない。まとまりがない。ごたごたしている。③念入りでない。④どの分類にも入らない。(その他)さまざま。【解字】本字は[襍]。形声。「衣」(=ころも)+音符「集」(=あつめる)。はぎれを寄せ集めてつくった衣の意。転じて、多種類がいりまじる意。

共-①ともに。いっしょに(する)。仲間になる。②「共産主義」「共産党」の略。和語で、接尾語「ども」に当てる。【解字】会意。上部は物を示し、下部は左右の手でそれをささげ持つ形を示す。両手をそろえて物をささげる意から、の意を派生した。

供-①物を神仏にささげる。そなえもの。②役立てるように、さし出す。人に物をすすめる。もてなす。③尋問されて事情を述べる。④とも。従者。おともする。【解字】形声。「人」+音符「共」。「共」は、両手で物をささげる形であるが、「ともに」の意に転じたため、のちに「人」を加えて区別した。

養-①食物によって体力を増す。②食物を与え(て育て)る。③心や知性をみがいて豊かにする。【解字】もと、食部6画。形声。音符「羊」+「食」。おいしいごちそうを食う・食わせる意。





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孫子の兵法:故に車戦に車十乗已上を得れば、其の先ず得たる者を賞し、而して其の旌旗を更め、車は雑えて之れに乗らしめ、卒は共して之れを養わしむ。:故車戦得車十乗已上、賞其先得者、而更其旌旗、車雑而乗之、卒共而養之。:金谷治○金谷孫子:一 其の先ず得たる者-最初に捕獲した身方の一番乗り。また最初に降参して来た敵兵と解する説もある。

孫子の兵法:故に車戦に車十乗已上を得れば、其の先ず得たる者を賞し、而して其の旌旗を更め、車は雑えて之れに乗らしめ、卒は共して之れを養わしむ。:故車戦得車十乗已上、賞其先得者、而更其旌旗、車雑而乗之、卒共而養之。:浅野裕一○浅野孫子:共-供と同じ。酒食を供応してもてなすこと。

孫子の兵法:故に車戦に車十乗已上を得れば、其の先ず得たる者を賞し、而して其の旌旗を更め、車は雑えて之れに乗らしめ、卒は共して之れを養わしむ。:故車戦得車十乗已上、賞其先得者、而更其旌旗、車雑而乗之、卒共而養之。:天野鎮雄○天野孫子:○故車戦得車十乗已上、賞其先得者  『武経』『古文』には故の字がない。「車戦」は戦車同士の戦闘。「得車」は敵の戦車を捕獲すること。「已上」は以上と同じ。「其」について、『新釈』は、「『其』の字は『その車十乗以上を得たる場合の』といふやうな意を現はす漠然たる意味の字」と。「賞其先得者」は最初に戦車を捕獲した者を賞すの意。それはほかの兵を励ますためである。張預は「車一乗は凡そ七十五人なり。車を以て敵と戦い、吾士卒能く敵車十乗已上を獲れば、吾士卒は必ず千余人を下らず。其の人衆きを以ての故に、徧く賞する能はず。但厚利を以て其の陳を陥れ先に獲たる者を賞し、以て余衆を勧む」と。一説に「其の先づ得らるる者を賞す」と読んで『国字解』は「最初に降参したる者に、先づ賞を与ふるなり。それにて残る敵も亦降参する心になるなり」と。
 ○更其旌旗  「其」は敵の戦車を指す。「旌」も「旗」もはたの総称。この句について『開宗』は「我車上の旌旗を以て、易へて、敵人の車上に樹(た)つ」と。味方の戦車として用いるを言う。
 ○車雑而乗之  「之」は上の雑えた車をうける。この句は捕獲した敵の戦車を味方の戦車の中にまじえ、敵の降参した兵をまじえ乗せるの意。『直解』は「得る所の車は、吾車と相雑へて乗る可し。彼の車をして相聚るを得ず、彼の卒をして車を同じくするを得ざらしむ。其の変叛を防げばなり」と。これに対して『新釈』は、この句は次の句「卒は善くして之を養ふ」と対になっていて、次の句が卒について言うのに対して、この句は車について言うのであり、そして車雑は車を雑ぜるのであって人を雑ぜるのではないと言い、「乗之」を「之に乗り」と読んで「鹵獲(ろくわく)したる敵の戦車を、味方の戦車隊の中へ雑へ編入して乗用する」と解する。鹵獲は敵の軍用品を奪う。しかし車を雑ぜることのみを言うのであるなら、この句は「車は雑へて之を用ふ」と、「乗」を「用」と作るべきであろう。この句の「乗」はわが兵が乗るの意ではない。わが兵がわが戦車に乗るのは当然である。またここではわが兵が乗ることに特別の意味を持たせるものでもない。わが兵が乗るのであるなら、乗の字は使用するまでもないことであろう。ここでは敵兵が乗るという意味で用いている。すなわち味方の兵が乗っているその中に敵兵を乗らせるのである。また仮に、味方の兵のみが乗るというのであるなら、初めより、敵の戦車を味方の戦車の中にまじえると言う必要はないであろう。「之を用ふ」のみで十分である。また一説に『俚諺鈔』は「敵より取り得たる車を一所に置かずして、所々に分け置くことは、若し不意の変を生じ、心がはりなどさせまじきが為に、参雑して、之を乗り用ふ。日本にて、降参人の備を先登に用ふるが如し。彼、誠に我に降るときは、死をかへりみず、忠を尽す」と。また一説に『評註』は「或は雑乗して諸軍に散置し、或は專乗して独り先鋒に任ず。皆可なり」と。
 ○卒善而養之  「卒」は敵の兵。「之」は「卒」をうける。この句について『直解』は「当に恩信を以て之を撫養すべし。帰るを思はざらしめ、我が用を為さしむ」と。

孫子の兵法:故に車戦に車十乗已上を得れば、其の先ず得たる者を賞し、而して其の旌旗を更め、車は雑えて之れに乗らしめ、卒は共して之れを養わしむ。:故車戦得車十乗已上、賞其先得者、而更其旌旗、車雑而乗之、卒共而養之。:フランシス・ワン仏訳 孫子○フランシス・ワン孫子:註
 一、「敵に取るの利は貨なり」の方策をとり、「敵に勝ちて強を益す」ことを図る以上、それに応じた手段をとるべきであり、本項はその一例とし言うのである。
 一、「其の先を得たる者を賞す」 一般には、「其の先ず得たる者を賞す」と読み、真っ先に捕獲した者の意と解されている。別に、「其の先ず得らるる者を賞す」と読み、最初に投降してきた敵兵に賞を与えるの意とする者もいる。投降してきた敵兵は善く給養して寝返りさせよとする次項との関係からすれば、一理なしとしない。この方策が、その奨励・宣伝のため、たとえば航空機持参の脱走者・亡命者らに対し、常に用いられていることは、現に見る所であろう。
 一、「敵に勝ち強を益す」ことを実現するために必要な根本の精神である。張豫は「獲る所の卒は、必ず恩信を以て之を撫養し、我が用と為さしむ」と註している。しかし、このことがその場限りのものではなく、全軍的に実施せられ、敵軍だけでなく敵国の全体に及ぼす力となるためには、全軍的な思想として徹底し精神となっていることが必要である。最近の有様は無残と言う外はないが、革命戦(内戦)時の中共軍は、この事に成功している。

孫子の兵法:故に車戦に車十乗已上を得れば、其の先ず得たる者を賞し、而して其の旌旗を更め、車は雑えて之れに乗らしめ、卒は共して之れを養わしむ。:故車戦得車十乗已上、賞其先得者、而更其旌旗、車雑而乗之、卒共而養之。:守屋洋○守屋孫子:それ故、敵の戦車十台以上も奪う戦果があったときは、まっさきに手柄をたてた兵士を表彰する。そのうえで、捕獲した戦車は軍旗をつけかえて味方の兵士を乗りこませ、また俘虜にした敵兵は手厚くもてなして自軍に編入するがよい。

孫子の兵法:故に車戦に車十乗已上を得れば、其の先ず得たる者を賞し、而して其の旌旗を更め、車は雑えて之れに乗らしめ、卒は共して之れを養わしむ。:故車戦得車十乗已上、賞其先得者、而更其旌旗、車雑而乗之、卒共而養之。:重沢俊郎○重沢孫子:だから車戦で敵の戦車十両以上を奪取した場合には、まっ先に奪いとった者に賞をとらせ、そして奪った戦車の旗を、わが方のものに取りかえる。その戦車は(奪った本人を乗せはするものの)、わが方の戦車にまじって使用し、捕虜となった敵兵は誠意をおって撫養する。

孫子の兵法:故に車戦に車十乗已上を得れば、其の先ず得たる者を賞し、而して其の旌旗を更め、車は雑えて之れに乗らしめ、卒は共して之れを養わしむ。:故車戦得車十乗已上、賞其先得者、而更其旌旗、車雑而乗之、卒共而養之。:田所義行○田所孫子:○車戦得車十乗以上、賞其先得者とは、車戦の場合に敵の戦車十台以上捕獲したものは、その最初に手柄を立てたものを重く賞し、兵を激励するとの意。
 ○而更其旌旗とは、敵の旌旗をおろし、味方の旌旗を建てるとの意。
 ○車雑而乗之とは、捕獲した戦車は、味方の戦車の中に交雑して配備し、捕虜をこれに乗せるとの意。
 ○卒善而養之とは捕虜はよくこれを懐柔して、役に立つようにするとの意。

孫子の兵法:故に車戦に車十乗已上を得れば、其の先ず得たる者を賞し、而して其の旌旗を更め、車は雑えて之れに乗らしめ、卒は共して之れを養わしむ。:故車戦得車十乗已上、賞其先得者、而更其旌旗、車雑而乗之、卒共而養之。:大橋武夫○大橋孫子:旌旗を易え-敵の旗をおろし、味方の旗を掲げる
 車を雑えて之に乗り-分取り戦車を味方の戦車隊にいれ

孫子の兵法:故に車戦に車十乗已上を得れば、其の先ず得たる者を賞し、而して其の旌旗を更め、車は雑えて之れに乗らしめ、卒は共して之れを養わしむ。:故車戦得車十乗已上、賞其先得者、而更其旌旗、車雑而乗之、卒共而養之。:武岡淳彦:新釈孫子○武岡孫子:車戦-戦車戦、中原での主力部隊どうしの会戦は戦車戦
 旌旗を更め-これまで掲げていた敵の幟(のぼり)や旗をおろし、代りに味方の旗を掲げる。戦車そのものの形態は変わらないのでそれでおかしくなかった
 車は雑えて-分取った戦車を味方の戦車の中に入れ 
 卒は善くして-敵の戦車の御者はよい待遇をして味方の兵とし

孫子の兵法:故に車戦に車十乗已上を得れば、其の先ず得たる者を賞し、而して其の旌旗を更め、車は雑えて之れに乗らしめ、卒は共して之れを養わしむ。:故車戦得車十乗已上、賞其先得者、而更其旌旗、車雑而乗之、卒共而養之。:佐野寿龍○佐野孫子:【校勘】卒共而養之  「竹簡孫子」では「善」が「共」となっている。「共」は「供・恭」と同意で、「うやうやしくする(礼儀正しい、礼儀にかなって丁重である)」の意。「卒」はここでは「降参した敵兵」の意と解する。「養」は「給養(物をあてがって養うこと)」で、ここでは「手厚く処遇すること」の意と解する。つまり、この句は「降参した敵兵は礼儀にかなった丁重な取扱いを旨とし、手厚くこれを処遇すること」を言う。その目的は言うまでもなく、敵に勝ちて強を益すために敵の降参兵を心服させて我が味方とし、我が用を為さしむことにあるのである。その意味においては「善」も「共」も意味を違えるものではないが、敵の降参兵に対する取扱いの原点を明確にするものとしては、「共」の方がより適当であるためここでは「竹簡孫子」に従って改める。
 【語釈】○車雑而乗之 戦争に於ては、単に敵の打倒だけを目的とするのではなく、敵の財貨・器材はもとより、その兵も味方のものとし、再使用することを企図するものでなければならない。ここではその一例として、捕獲した敵の戦車に降参兵と我が兵が雑えて乗り、共に戦っている状況が説明されているが、例えば、このことを「敵に勝ちて強を益す」と曰うのである。
 ○卒共而養之 この句は、「敵に勝ちて強を益す」ことを実現するために必要な根本の精神を表す。毛沢東曰く「投降した者を殺すは不可、捕虜を殺すはとりわけ不可」と。

○著者不明孫子:【車戦】兵車の部隊どうしの戦闘。
 【賞其先得者】兵車を最初に捕獲した兵士に賞を与える。賞を与えるのはあまりにも当然のことと思われるから、ここでわざわざ「賞す」というのは、相当の重賞を与えることをいうのであろう。なお、全員に賞を与えることはできないから、代表者として一人を賞し、他の者の戦意を高める趣旨だとふつう理解されている。また、「先づ得らるる者」(最初に投降して兵車を捕獲された敵兵)を賞するのだとする説(曹操など)もあるが、これは不自然であろう。

孫子の兵法:故に車戦に車十乗已上を得れば、其の先ず得たる者を賞し、而して其の旌旗を更め、車は雑えて之れに乗らしめ、卒は共して之れを養わしむ。:故車戦得車十乗已上、賞其先得者、而更其旌旗、車雑而乗之、卒共而養之。:山鹿素行:孫子諺義○孫子諺義:『車戦に車十乗以上を得るときは、(其の)(其の字、解説中に見る、ここ誤脱なるべきにより補へる)先づ得る者を賞して、其の旌旗を更(か)ふ』
 更は換也。車戦のとき、車十乗より上を味方に取得、是れ大なる勝也。車一乗に七十五人つく、しかれば十乗は七百五十人、車十乗以上を得ると云ふは、敵の兵を千餘うつとりたる也。此の如き大利をえたらんには、乃ち撰功をつまびらかにいたして、其の内にて一番の高名をとげたるものを賞し、其の旌旗をかへて、人にもそのものの勇武功名をしらしむる也。先づ得る者と云ふは、後世の先登[せん‐とう【先登】①まっさきに敵城に登ること。まっさきに敵城に切り入ること。いちばんのり。さきがけ。先陣。②まっさきに到着すること。また、まっさきに物事を行うこと。]さきがけの心、一番の高名也。(其)之旌旗を更ふとは其の有功者の旌旗をかふること也。たとへばつゐ(對)のさしもの、なみのしるしなりしを、改めて其のものの思ひざし心次第のしるし旗を用ひしむるの心にかなふ也。舊説に、而其の旌旗を更ふの五字、下の車は雑へて之れに乗りの句に連續せしめ、其の得る所の車を旗をとりかへ味方のはたをたてて、この車を敵にしらしめざる也と註す。魏武・李筌・張預が註皆然り。舊説に、其の先づ得る者を賞すと云ふは、大勢有功のものあるをあまねくは賞せられざるゆゑに、其の先づ得る者を賞すとしるせりと、諸注皆然り。今案ずるに、此の説あやまれり。先づ得る者をば厚く賞して、其の旌旗をかへ、人の耳目をことならしむる、先づ得るもの此の如きときは、其の外末々の手柄高名のものども、それぞれに賞功あらんこと推して知る可き也。然らざれば敵の利を取る者は貨すれば也の一句空言也。書は言外を味ひて、推して其の實を知るにある也。
『車は雑へて之れに乗り、卒は善(よ)みんして之れを養ふ』
 車は得る所の車也。卒は敵方より分捕せしむる處の卒也。車は則ち味方の車と一つにいたして、我が軍用にまじへ之れを用ふ、是れ雑へて之れに乗る也。魏武註に、得る所の車に敵の士卒もあらん間、味方の兵とまじへのせて敵兵ばかりのせざるもの也。其の變叛を防ぐ也。直解も亦之れに從ふ。分捕はよみんしてこれをやしなひ恩を厚くすべし。善と云ふは、彼れ元無心也、主将敵味方とへだたるゆゑに死を顧みず一戦して不意に分捕せらる。しかれば更に彼れをにくむべきにあらず、彼が必死の地に入りて快戦せしめしを褒美し、よみんすべきことなるがゆゑに、善と云へり。養ふはそのほどほどにつけて祿をあたへ、衣食をゆたかにして、味方に志をおとしつくべき也。凡そ賊を討ち仇を撃つ、その國民にとがなし、士卒に怨あらざること也。これまことの良將の作略と云ふべき也。

孫子の兵法:故に車戦に車十乗已上を得れば、其の先ず得たる者を賞し、而して其の旌旗を更め、車は雑えて之れに乗らしめ、卒は共して之れを養わしむ。:故車戦得車十乗已上、賞其先得者、而更其旌旗、車雑而乗之、卒共而養之。:荻生徂徠:孫子国字解○孫子国字解:『故に車戦に車十乗以上を得ば、其の先づ得らるる者を賞して其の旌旗を更へ車をば雜へて之に乗しめ、卒をば善くして之を養へ、是を敵に勝て強を益すと謂う』
 故の字諸本になし。今集注本に從て是を加ふ。此段は、上の取敵之利者貨也と云を承て云へれば、故の字あるをよしとす。車戦は車にて戦ふなり。戦に車戦、騎戦、徒戦あり。是は車戦の一つを例に擧て、上の句の取敵之利者貨也と云意を説けり。車十乗以上を得とは、一乗に甲士三人、歩卒七十二人ありて、十乗以上なれば敵七八百人以上なり。敵七八百人以上を此方の手に入るることを得ると云ことにて、敵の此方へ降参するを云なり。賞其先得者とは、先へ降参したる者に賞を與ふることなり。十乗に大将分の甲士三十人、十乗以上にて三十人以上なれば、一々には賞を與へがたし。故に最初に降参したる者に、先づ賞を與ふるなり。それにて殘る敵も亦降参する心になるなり。更其旌旗とは、旌旗は相符しなるゆへ、降参したる車の上に立たるはたをば取て、此方の旗じるしを立ることなり。車雜而乗之とは、一乗の武者七十五人の内、車にのるは三人にて、歩卒七十二人なり。その三人の内、一人も二人も味方の車にのらせ、新参と古参を入れまぜて、互に車にのらすることなり。是は方便を以て降参することもあるものゆへ、用心の為に入れ雜ゆるなり。卒善而養之とは、歩卒を念比に撫養ふてなつくる様にすべし。降参したる士卒は、諸事うゐうゐしく気遣ふ心多きものゆへ、隨分心を付べきことと云意にて、善してと云なり。善くするとは、どこからどこ迄も隨分に念比にすることなり。かくの如くする時は、敵の利となるべき敵方の軍兵みな吾が利となるゆへ、是を勝敵而益強と云なり。敵をば殺すべきことばかり思はず、戦を用ひず、貨を以て敵をなづけ、敵の士卒を此方の用に立る時は、敵に勝つほど味方の強み益すなり。若し敵を殺して勝を取るとばかり思ふ時は、敵に勝ちても、味方の軍兵增さず、いつも同じことなるゆへ、勝敵而益強と云ものにてはなきなり。此段の意によく徹底せば、智将の務食於敵のはかりごと窺ひ見るべし。古説に得車十乗以上と云を、戦を以て敵を追落して、敵方の車を味方へ奪取ることに見、賞其先得者と云を、先づうるものとよみて、味方の軍兵の敵の車を褒美に與ふると見たり。是にても通ずる様なれども、戦て敵を殺す一邊に拘はるゆへ、孫子が深意を失ふなるべし。そのうへ下の文の、其旌旗と云、其の字降参したる車の旌旗を指して云なれば、其先得者と云其の字も、降参の車を指して云と見て、二の其の字一意になり、文例穩かなり。古説の如く見れば、一は味方を指し、一は敵を指して、文例合はぬなれば、かたかた從ひがたし。

孫子の兵法:故に車戦に車十乗已上を得れば、其の先ず得たる者を賞し、而して其の旌旗を更め、車は雑えて之れに乗らしめ、卒は共して之れを養わしむ。:故車戦得車十乗已上、賞其先得者、而更其旌旗、車雑而乗之、卒共而養之。:吉田松陰:孫子評註○孫子評註:『車戦に車十乗以上を得れば、其の先づ得たる者を賞す。』
 兵家は先を貴ぶ。適(ゆ)くとして然らざるはなし。兵機の在る所、宜しく意を注ぐべし。
 『而して其の旌旗を更(か)へ(旌旗ははたの総称。敵のはたを、味方のはたに代えて立てるの意。)、車は雑へて之れに乗り(降参した車には、味方と降参した敵とを入れまぜて乗る。)、』 或は雜乗(味方と降参した敵とを入れまぜて乗る。)して獨り先鋒(先陣に進むもの。)に任ず、皆可なり。余謂(おも)へらく、洋艦を奪ひて雜乗するの法最も妙なり。
 『卒は善くして之れを養ふ。』
 善養、最も術あり。

孫子十家註:『故に車戦車十乗已上を得れば、其先づ得たる者を賞す。』 

孫子の兵法:故に車戦に車十乗已上を得れば、其の先ず得たる者を賞し、而して其の旌旗を更め、車は雑えて之れに乗らしめ、卒は共して之れを養わしむ。:故車戦得車十乗已上、賞其先得者、而更其旌旗、車雑而乗之、卒共而養之。:曹操孟徳:魏武帝註孫子:孫子十家註○曹公:車戦を以て能く敵の車十乗已上を得れば之れを賞賜[しょう‐し【賞賜】シヤウ‥賞して物を賜うこと。また、そのもの。]す。車戦に車十乗已上を得らるる者は之れを賞すと言わず。而して得る者を賞すを言うは何ぞ。言うこころは、其の車を得る所の卒を賞すを開示[かい‐じ【開示】明らかにし示すこと。教えさとすこと。かいし。]せんと欲するなり。陣の車の法なり。五車は隊を為す。僕[①男の召し使い。しもべ。②男子の自称。やつがれ。もと自分を卑下していう語であったが、現在は同等ないしそれ以下の相手に対して用いる。【解字】形声。「人」+音符「菐」(=荒けずり)。粗野な人の意。一説に、「菐」を撲うつ意に解し、馬にむちうつ御者の意とする。][僕射(ぼくや)は、官名を指す。]は一人なり。十車は官を為す。卒長は一人なり。車十乗は、乗る将吏は二人なり。因りて之を用う。故に別に之れを賜るを言う。将をして恩を下に及ぼしめんと欲するなり。或いは云わく、言うこころは車十乗已上をして有るを自ら敵と戦わしむ。但だ其の功有る者に取りて之れを賞す。其の十乗已下は、一乗獨り得ると雖も、餘九乗皆之れを賞す。進み率いて士を勵ます所以なり。

○李筌:賞を重くして勸進するなり。

孫子の兵法:故に車戦に車十乗已上を得れば、其の先ず得たる者を賞し、而して其の旌旗を更め、車は雑えて之れに乗らしめ、卒は共して之れを養わしむ。:故車戦得車十乗已上、賞其先得者、而更其旌旗、車雑而乗之、卒共而養之。:杜牧:孫子十家註○杜牧:夫れ車十乗已上を得る者は、蓋し衆人 命を用い之れを致す所なり。若し徧(あまね)く之れを賞すれば則ち力其の獲る所の車と足らざるなり。公家仍(しき)りに自ら財貨を以て其の唱謀 先登[せん‐とう【先登】①まっさきに敵城に登ること。まっさきに敵城に切り入ること。いちばんのり。さきがけ。先陣。②まっさきに到着すること。また、まっさきに物事を行うこと。]する者を賞す。此れ士卒を勸勵する所以なり。故に上文に云わく、敵の利を取る者は貨なり、と。十乗を言う者は、其の綱目を擧ぐるなり。

○賈林:未だ得ざる者を勸め自らをして勉めしむるなり。

孫子の兵法:故に車戦に車十乗已上を得れば、其の先ず得たる者を賞し、而して其の旌旗を更め、車は雑えて之れに乗らしめ、卒は共して之れを養わしむ。:故車戦得車十乗已上、賞其先得者、而更其旌旗、車雑而乗之、卒共而養之。:梅堯臣:梅聖兪:孫子十家註○梅堯臣:徧(あまね)く賞すれば則ち周難し。故に一を奨めて百を勵ますなり。

○王晳:財を以て其の先ず得たる所の卒を賞す。

○張預:車一乗凡そ七十五人、車を以て敵と戦う。吾が士卒良く敵の車十乗已上を獲る者、吾が士卒必ず千餘人に下らざるなり。其の人の衆きを以て、故に徧く賞す能わず。但だ厚利を以て其の陳に陥いて先ず獲る者を賞す。以て餘衆を勸める。古人兵を用いるに、必ず車をして車を奪わしむ。騎は騎を奪う。歩は歩を奪う。故に呉起 秦の人と戦う。三軍に令して曰く、若し車は車を得ず、騎は騎を得ず、徒は徒を得ざれば、軍を破ると雖も皆功無し、と。

孫子十家註:『而して其の旌旗を更へ、』
 
孫子の兵法:故に車戦に車十乗已上を得れば、其の先ず得たる者を賞し、而して其の旌旗を更め、車は雑えて之れに乗らしめ、卒は共して之れを養わしむ。:故車戦得車十乗已上、賞其先得者、而更其旌旗、車雑而乗之、卒共而養之。:曹操孟徳:魏武帝註孫子:孫子十家註○曹公:吾れと同じなり。

○李筌:色をして吾れと同ぜしむ。

○賈林:識らざらしむるなり。

○張預:敵の色を變じ己と同ぜしむ。

孫子十家註:『車は雜へて之に乗り、』 

孫子の兵法:故に車戦に車十乗已上を得れば、其の先ず得たる者を賞し、而して其の旌旗を更め、車は雑えて之れに乗らしめ、卒は共して之れを養わしむ。:故車戦得車十乗已上、賞其先得者、而更其旌旗、車雑而乗之、卒共而養之。:曹操孟徳:魏武帝註孫子:孫子十家註○曹公:獨り任ぜざるなり。

○李筌:夫れ降虜の旌旗、必ず其の色を更え、而して其の事を雜う。車は乃ち用う可きなり。

孫子の兵法:故に車戦に車十乗已上を得れば、其の先ず得たる者を賞し、而して其の旌旗を更め、車は雑えて之れに乗らしめ、卒は共して之れを養わしむ。:故車戦得車十乗已上、賞其先得者、而更其旌旗、車雑而乗之、卒共而養之。:杜牧:孫子十家註○杜牧:士卒自ら敵の車を獲るに、雜然として自ら之れに乗るを任ずる官は録せざるなり。

孫子の兵法:故に車戦に車十乗已上を得れば、其の先ず得たる者を賞し、而して其の旌旗を更め、車は雑えて之れに乗らしめ、卒は共して之れを養わしむ。:故車戦得車十乗已上、賞其先得者、而更其旌旗、車雑而乗之、卒共而養之。:梅堯臣:梅聖兪:孫子十家註○梅堯臣:車は雑えて乗るを許す。旗は故(もと)因り無し。

○王晳:謂わく敵の車を得るに、我が車と用を之れに雜う可きなり。

○張預:己の車は敵の車と参じ雜えて之れに用う。獨り任ず可からざるなり。

孫子十家註:『卒は善くして之を養ふ。』
 
張預:獲る所の卒、必ず恩信を以て之れを撫養す。我をして用を為らしむ。


意訳
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○金谷孫子:だから、車戦で車十台以上を捕獲したときには、その最初に捕獲した者に賞として与え、敵の旗じるしを身方のものにとりかえたうえ、獲得した車は身方のものにたちまじって乗用させ、降参した兵卒は優遇して養わせる。

○浅野孫子:したがって、戦車戦で兵車十台以上を捕獲したときには、全部を最初に捕獲した者に賞として与え、さっそく敵の旗じるしを自軍のものに取り換えたうえ、それらの戦車は、賞を受けた者の部隊に混じえて配属して乗車させ、その戦功のあった部隊の兵卒は、特別に飲食を供給して厚遇する。

○町田孫子:だから、車戦で戦車十台以上を捕獲した場合には、その最初に捕獲した者に褒賞を与え、その戦車は旗じるしをとりかえたうえで味方にくみ入れて乗用させ、捕虜の兵卒は優遇して手厚く保護させる。

○天野孫子:従って戦車戦において、敵の戦車十台以上を捕獲した場合、最初に捕獲した者にのみその功を賞し、敵の戦車はその旗印を変え、これを味方の戦車の中にまじえて、降参した敵兵をも乗らせ、敵の兵にはよい待遇をして養い、わが用に役立たせる。

○フランシス・ワン孫子:それ故に、戦車戦に於て、十輛以上の戦車を捕獲した場合は、その指揮官車(先頭車)をぶん取った者達に賞を与え、捕獲戦車の旗印を味方のものと取り代え、我が隊列に加えて再使用せよ。捕虜は丁重に取扱い、手厚く給養せよ。

○大橋孫子:したがって、敵の戦車を奪ったような場合には、率先して戦った者に賞を与え、捕獲戦車の旗印を味方のものと代えてわが戦列に加え、敵の乗員はよく待遇してそのまま使う。

○武岡孫子:したがって敵と戦車戦を行なって敵戦車十台以上を奪い取れば、まずその捕獲部隊に賞を与え、次に敵戦車の隊旗を味方のものに取り替え、彼らを味方に編入し、その兵卒は優遇してわが軍用に使う。

○著者不明孫子:車戦にあたって敵の兵車十台以上を捕獲した場合は、最初に捕獲した者に賞を与え、そして、その旗印をつけ替えて、兵車は味方の兵車の中に交ぜていっしょに使い、捕虜の兵士は厚遇して養ってやる。

○学習研究社孫子:そこで、車戦で、十台以上の戦車を獲得した時には、最初に獲得した者には褒美を与えて、獲得した車には自軍の旗をつけ、自軍の車と同様に使う。敵の戦車に乗っていた兵卒については、彼らが善い性格の者であれば、養って自分の兵卒とする。

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