2ntブログ
かっぱさんのBookmarkBar
孫子研究ブログです。孫子兵法は別名『孫子兵経』、『SUNTZU』、『The Art of WAR』ともよばれています。ナポレオンや毛沢東も愛読していました。注釈者には曹操、杜牧、山鹿素行、荻生徂徠、新井白石、吉田松陰、等の有名人も多いです。とにかく深いです。

孫子 兵法 大研究!トップ⇒本文注釈:孫子 兵法 大研究!
-------- (--) | 編集 |
上記の広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。
新しい記事を書く事で広告が消せます。


2012-01-25 (水) | 編集 |
孫子 兵法 大研究!

本文注釈:孫子 兵法 大研究!

ブログランキング・にほんブログ村へ
にほんブログ村

『孫子曰く、兵は国の大事なり。』:本文注釈 picture widgets

⇒意訳に移動する


 冒頭の言葉というのは、どのような書物においても特に重要な意味を持つ。例えば、『論語』の冒頭の言葉の、「子曰く、学びて時に之れを習う。亦説ばしからずや…。」は「小論語」と呼ばれているそうだが、『孫子』の「兵は国の大事なり」は、それこそ「小孫子」と呼ばれるに相応しい一文であろう。この一文のなかに、孫武の戦争に対する考え方・姿勢がすべて表れている。
 古来から伝統的にこの「兵は国の大事なり」と用間篇の最後の、「此れ兵の要にして三軍の恃みて動く所なり」の文とは、一気通貫した戦争に対する厳とした思想のつながりがあり、始まりと締めの言葉として相応しいものであるという高評化が与えられていたが、1972年、山東省の銀雀山漢墓において、『竹簡孫子』が見つかり、そこには火攻篇が最後の篇として記録に残っていたことから、火攻篇の最後の言葉の、「此れ国を安んじ軍を全うするの道なり」が、『孫子』の最後を括るにやはり相応しい言葉であるとの説を採る者が多くなった。ちなみに、私は最初に『孫子』を読んだ時、最終篇の用間篇の終りの「此れ兵の要にして三軍の恃みて動く所なり」まで読み終わってから、何か歯切れの悪さを感じ、名言が並ぶ『孫子』の言葉の取りを飾る言葉としては、なにかどこかに違和感を感じていた。その時ふと気にかかり火攻篇の最後の文である「此れ国を安んじ軍を全うするの道なり」を改めて読み返した時、あれ?こっちの言葉の方が孫子の最後を締めくくるにはやっぱり相応しい言葉だな、と思ったものである。だからこの『竹簡孫子』で、火攻篇が最終篇であるという記録を確認できたとき、内心鬼の首でも取ったかのように嬉しかった。やはり自分の感覚は大事にしていかなくてはならないな、と再認識もできた。よって私は、用間篇ではなく火攻篇の最後の言葉こそが、この「兵は国の大事なり」と一貫した綱領の言葉であると今でも思っている。
 戦争にとってより重要なことは、火攻めよりもスパイの方であることは、疑う余地もあるまいと思う。よって古来の注釈家も用間が最終篇に相応しいとしたこともよくわかる。が、しかしおそらくはどの注釈家も感じてはいたが、火攻篇を最終篇として置くことができなかったのは、魏の武帝曹操注の『魏武帝註孫子』によるものが大きいことは間違いない。『魏武帝註孫子』は、『孫子』注において最古のものである。伝統ある『孫子』の注釈作業において、篇の位置を変更するということは常識としてやってはならないことである。又、最古の資料であり、なおかつ相当程度信用に足る人物である曹操が残した資料ということで、一級の価値があったことも、火攻篇を最後の篇とできなかった理由の一つであろう。これだけでも『竹簡孫子』の発見は、学界の常識を覆すに十分なものであった。
 「兵は国の大事なり」は、軽々に戦争を起してはならないと君主を戒めた言葉であろう。当時、将は戦争を起す権限はもっていないことからも、君主を対象にした言葉であることは間違いない。戦争を軽々しく起してはならない理由は、戦争には莫大な費用や人的な労費がかかるからである。そのことは作戦篇に詳しい。巧遅よりも拙速を善しとした言葉もこの事から生まれている。又、「遠い所に輸送をしても輸送先には二十分の一しか届かず、民の貯蓄も6・7割を失うことになる」と言っている作戦篇の記述は、戦争という非常時の一大事性を物語っている。それだけ当時は戦争と言うと国家の一大事であり、故に他国がどんなに挑発してこようと、軽々と戦争は起こすべきではないとし、孫武自身も殊に肝に銘じていたことだろう。そして、歴史を振り返ってみると、この「兵は国の大事なり」の文を読んで学んだと思われ、一時の感情に流されることなく、戦争を興すことに慎重に振る舞った君主は、実際存在していた。この「兵は国の大事なり」の一文で、無益な戦争を回避でき、人民の命や生活、財産が守られたという事実があったということは、これは賞賛すべき素晴らしいことである。また、『孫子』は兵法書であるが、その範疇を越えた書物であるという評価が一方で与えられている。『孫子』の言葉は真理をよくとらえており、ゴロも良く、抽象的な言葉が多いがゆえに、多くの分野において現在も広く活用され、人々に愛されている。
 孫武は、この「兵は国の大事」であることを「察せざるべからず」と言っている。つまり、かなり強調しているのである。戦争は兵士や人民の生死が関わったものであり、国の存亡にも大きな影響を与えるものであるから、人民の死や国の滅亡につながるものを軽々しく決めるべきではないことを、この「兵は国の大事なり」の言葉によって、国の指導者はよくよく玩味すべきである。この真理は、太古の昔から変わることなく、今にも通じ、これからも続く永遠の真理であろう。科学も文化も一切の智恵も、人無くしては生まれず、社会的な秩序なくては日々の生活にも困窮することになるのである。「兵は国の大事なり」の文から、本当に戦争は必要なのか、勝算は十分にあっても、利に合わないのではないだろうかなどと熟考してみて、必要はない、又は割に合った利(国益)は生じない、と計算した結果思ったならば、戦争を回避するという選択肢を採るということも考えてみるべきである。『孫子の兵法』が戦争嫌いの書と言われる所以がここにある。

兵-①つわもの。武器をとって戦う者。軍隊。(軍隊では最下位の階級をいう。)②武器。③いくさ。戦争。【解字】会意。「斤」(=おの)+「廾」(=両手でささげる形)。両手で持つ手おのの意から、武器を表す。

国-①政権の支配下にある土地。②領土・人民・主権をもつ政治社会。③地方官・諸侯が治める土地。④自分のくに(の)。特に、日本(の)。【解字】会意。「囗」(=かこい)+「或」(=ほこで守る土地)。境界でくぎられた領土の意。[圀]は異体字。「圀」は、唐の則天武后が「國」字の「或」が「惑」を連想させるのを嫌ってこの字体を作る。「国」は俗字。

大事-だい‐じ【大事】①重大な事件。普通でない事。非常の事。②(一大事の略)出家して悟りを開くこと。③容易でない事。危うい事。④かけがえのないものとして大切に扱うべきさま。⑤重要。肝要。



「竹簡孫子」「桜田本」には、「大事」の下に「也」の字があるが、「十一家註本」、「武経本」にはない。





孫子の兵法:孫子曰く、兵は国の大事なり:孫子曰、兵者国之大事也:金谷治○金谷孫子:大事-桜田本には、この下に「也」の字がある。

○著者不明孫子:兵-戦争・軍事。ほかに、武器・兵士・軍隊などの意味がある。

孫子の兵法:孫子曰く、兵は国の大事なり:孫子曰、兵者国之大事也:佐藤堅司:孫子の思想史的研究○佐藤孫子:「兵」は戦争を意味する。

孫子の兵法:孫子曰く、兵は国の大事なり:孫子曰、兵者国之大事也:天野鎮雄○天野孫子:「兵」には戦争・(局地的)戦闘・兵器・軍隊・兵士・軍事・計謀などの意味がある。ここでは戦争の意。…「国」は春秋時代の諸侯の国の意。ここではそれに拘泥しないで広く国家の意に解する。…「事」はできごと。「大事」は大事件。

孫子の兵法:孫子曰く、兵は国の大事なり:孫子曰、兵者国之大事也:田所義行○田所孫子:兵者、国之大事とは、戦争は国家の重大事であるとの意。兵とは兵士・軍隊・武器等の意味があるが、ここでは戦争の意。

孫子の兵法:孫子曰く、兵は国の大事なり:孫子曰、兵者国之大事也:重沢俊郎○重沢孫子:兵-原義は木材を荒削りする刃物。それがまず武器→武器を使って仕事をする人→その組織集団→そういう集団の行動すなわち戦争、という方向へ転伸し、原義は殆んど消滅。

孫子の兵法:孫子曰く、兵は国の大事なり:孫子曰、兵者国之大事也:大橋武夫○大橋孫子:兵-軍隊、ここでは軍隊を用いること、すなわち戦争。

孫子の兵法:孫子曰く、兵は国の大事なり:孫子曰、兵者国之大事也:北条氏長:士鑑用法○北条氏長「士鑑用法」:兵と云は士をさして云。

孫子の兵法:孫子曰く、兵は国の大事なり:孫子曰、兵者国之大事也:山鹿素行:孫子句読○山鹿素行「孫子句読」(明暦二年 1656年):孫子所謂兵者士也。

孫子の兵法:孫子曰く、兵は国の大事なり:孫子曰、兵者国之大事也:山鹿素行:孫子諺義○山鹿素行「孫子諺義」(寛文十三年 1673年):ここにては軍旅の事をさして兵と云也。…大事とは、国家にかかることを大事と云へり。…大事と云ふときは、国家人民の事にかからざれば、いはざる言也。

孫子の兵法:孫子曰く、兵は国の大事なり:孫子曰、兵者国之大事也:荻生徂徠:孫子国字解○荻生徂徠「孫子國字解」:此本文にては兵革などと云やうなる詞にて軍のことを兵と云。…国とは國郡の国には非ず、国家と云と同じ様なる詞にて諸侯の家を云なり。大夫の上にては家と云ひ、諸侯の上にては国と云、君の身の上より家来民百姓までをも籠めて云詞なり。されば兵者国之大事とは、軍と云ものは諸侯の身の上にては是に過たる大きなることはなしと云意なり。ひと軍にても物入夥しく、民の愁も甚しきこと、外のことには、かやうなる類またもなく、多くの人の生死、国の立つも亡るも軍の勝負にかかることなればかく云へり。

○徳田邕興「孫子事活鈔」:兵は剣戟武器の総名にて、これを交へ戦ふ軍戦を云ふなり。

孫子の兵法:孫子曰く、兵は国の大事なり:孫子曰、兵者国之大事也:吉田松陰:孫子評註○吉田松陰「孫子評註」:「兵(いくさ。戦争。)は国の大事、死生の地、存亡の道なり。察せざるべからず。」  開口の一語、十三篇を冒ひて餘りあり。先師(山鹿素行のこと)曾て「千載(千載は千年。永久にかわることのない格言。)不易の格言」を以て之れを評せり。旨い哉。兵は是れ軍旅の事[軍旅とは軍隊。軍勢。戦争。いくさ。]。死生存亡は乃ち大事たる所以の故なり。諸説多くは然り、異説を須(もち)ふることなかれ。地は是れ在る所、道は是れ由る所、察の字は虚(虚は実に対していう。いかに察するかの内容はまだ示していないので「虚に」と言う。)に下の經(後述)・校・佐の三字を掲げたり。全篇の骨子、此の字に在り。

○桜田景迪「孫子略解」:国は諸侯の上にて云ふなれども、専ら言ふなれば天下と云ふも同じなり。

孫子の兵法:孫子曰く、兵は国の大事なり:孫子曰、兵者国之大事也:杜牧:孫子十家註○杜牧:傳に曰く、国の大事は、祀りて戎を與ることに在り。[戎とは兵士。軍隊。いくさ。]

○張預:国の安危は兵に在り。故に武を講じ、兵を練る。実に先ず務むるなり。


意訳


人気ブログランキングへ
picture widgets

○ほとんどの孫子注釈書:戦争とは、国家の重大事である。

○浅野孫子:軍事とは、国家の命運を決する重大事である。

○フランシス・ワン孫子:戦争とは、国家にとって回避することのできない重要な問題である。

⇒このページのTopに移動する

⇒トップページに移動する

⇒計篇 全文に移動する















2012-01-25 (水) | 編集 |
孫子 兵法 大研究!

本文注釈:孫子 兵法 大研究!

篇名『計』:本文注釈 picture widgets

「武経七書」・「平津館本『魏武注孫子』」では「始計第一」とある。「宋本十一家註孫子」では「計」とある。「古文孫子」では「計篇第一」とある。「竹簡孫子」は篇名が欠けているため不明であるが、「宋本十一家註孫子」とほかの篇名がほぼ一致することから「計」であると考えられる。

孫子の兵法:計:始計:浅野裕一○浅野裕一「孫子」:開戦前に自国と敵国の状況を比較し、いずれに勝算があるかを計謀すべきことの重要性を説く。

孫子の兵法:計:始計:佐藤堅司:孫子の思想史的研究○佐藤堅司「孫子の思想史的研究」:祖廟の前で五事・七計・詭道を計量し、勝敗の数を算定すること。

孫子の兵法:計:始計:天野鎮雄○天野鎮雄「孫子」:本篇は、この彼我両国の軍備の優劣の数を計算するというその計算から、計篇の篇名が生じたものである。始はいまだ戦わざる前という意味である。  「孫子・呉子」:開戦の前に自国と敵国の状況を、冷静的確に比較判断し、どちらに勝算があるかを検討すべきことを述べる

○学習研究社「孫子」:戦争を計算的なものとし、状況の優劣を冷静に計算すること。

孫子の兵法:計:始計:フランシス・ワン仏訳 孫子○フランシス・ワン仏訳「孫子」:戦争に於ける諸要素を事前に算定・評価し、未だ戦わざるにまず勝つ道を求めること。

孫子の兵法:計:始計:大橋武夫○大橋武夫「兵法孫子」:始めに考えを練ること。状況判断。

孫子の兵法:計:始計:田所義行○田所義行「孫子」:始計とは、計画をはじめること。ここでは戦争するについて、あらゆる計画を始めるとの意。

孫子の兵法:計:始計:金谷治○金谷治「孫子」:「計」とは、はかり考える意味。開戦の前によく熟慮すべきことを述べる。

孫子の兵法:計:始計:武岡淳彦:新釈孫子○武岡淳彦「新釈孫子」:計とは、はかり考えることである。何を計り考えるのか。それはこの戦争を行った場合、勝つか負けるかの予想である。

孫子の兵法:計:始計:重沢俊郎○重沢俊郎「孫子の兵法」:彼我の総合的戦力をあらゆる角度から徹底かつ精密に分析・計量した上で、勝敗についての責任ある見通しを立て、同時に作戦計画上の重要事項を決定すること。

孫子の兵法:計:始計:守屋洋○守屋洋「孫子の兵法」:事前に的確な見通しをたてて取り掛かること。

○「孫子」著者不明:はかる。計謀・計算両様の意味を含む。戦争の開始に先立って、比べ、数え、考え、調べる。

孫子の兵法:計:始計:吉田松陰:孫子評註○吉田松陰「孫子評註」:始計は未だ戦わずして廟算(朝廷で作戦計画をたてる。)するなり。「之れ(戦争を諸要件(後出の主・将・天地・法令・兵衆・士卒・賞罰など七つのこと)の計算によって検討する。)を校するに計を以てす」とは即ち其の事なり。前人多く謂ふ、「古書の篇目は率(おおむ)ね後人の定むる所に係る」と。今其の信(まこと)に然るを覺ゆ。而して其の名づくる所以は、或は徒だ篇首の數字を摘み、或は明かに篇中の要言を取り、或は暗に篇中の意を含む。此の篇(『古文孫子』では篇名が単に「計」となっている。)本(も)と唯だ計篇にして、是れ明かに取れるものなり。又始の字を加へたるは、是暗に未だ戦はざるの意を含む、語孟(『論語』『孟子』の篇名は、学而篇あるいは梁恵王篇のように、篇首の字の二、三を取り出してつけたものである。)の篇目と異なり。

孫子の兵法:計:始計:荻生徂徠:孫子国字解○荻生徂徠「孫子国字解」:始ははじめなり。計ははかりごとなり。はかりごとを始めとすと讀むなり。文字の意を知らぬものは、はかりごとと云へば、はや人をたばかりいつはることと心得るは僻事なり。兵は詭道なれば、人をたばかるも計の内の一つなるべけれども、計の字の意は、ものをつもりはかり目算をすることなり。此始計の篇は、總じて軍をせんと思はば、まづ敵と味方をはかりくらべて、軍に勝べきか勝ましきかと云ことを、とくと目算して見て、果して勝べき圖をきはめて軍をすべきことを云へり。孫子一部は専ら合戰の道をば説かず。かやうに前方に目算をせず了簡を究めずして合戰に勝つと云ことはなきわけなるゆへ、此篇を孫子の開巻第一義とするなり。第一とは次第の一と云ふ意にて、孫子十三篇の最初なればかく云へり。…。

孫子の兵法:計:始計:山鹿素行:孫子諺義○山鹿素行「孫子諺義」:此の篇を始計と云ふことは、発端にしるす處のごとく、軍旅の事は死生存亡のかかる大事なるがゆゑに、起こさざるの以前に詳にはかり考へよと云へる義を以て、始にはかると云ふ篇を、十三篇の巻頭にしるせる也。始は、はじめとよめり。始と云ふ時は終る心をふくむ。始において終を考ふる心あり。計は謀と云ふ字と同意也。しかれども計會計算の字義ありて、彼此をよく考へはかるの心あり。しかれば此の計の字は、唯だはかりごととばかり見る可からず、敵味方の様を詳に合せかんがふるの心なり。此の篇にも之れを校ふるに計を以てすと出でたり。校も計も彼我をあはせて、その有餘不足をかんがへ、足らざる所をあらため調ふるの心なり。故に計は謀の字義とは少し心得かはるといへる也。此の篇の始謀と言わずして始計と云ふこと、尤も孫子が兵法の心得也。古来兵を用ふるものは、敎閲治兵と號して四時の獵漁に必ず兵をならはすことあり、武を講ずと云ふ是れ也。始計と云ふとは、其の心かはれり。敎閲はかねて兵法をならはし置くのこと也。此の篇は兵を用ふるの大概大要をつづめて此の篇とす。このゆゑに始計は兵法の再閲重習など云ふ心に相かなへり。

○伊藤鳳山「孫子詳解」:始計第一  始計は篇の名なり。作戦謀攻の類皆同じ。始とは先なり。國語の晋語一に曰く、安に始めて而して可なると。韋注に曰く、計は算なり、と是なり。始計とは、師を興し衆を動かすの初め、先ず七計を用い、而して五事得失の多寡を算し、我を審にし彼を知り以て豫め勝負の實を決するを謂うなり。管子の參患篇に曰く、計必ず先ず定まって而して後、兵 境を出ず。計未だ定まらずして、而して兵 境を出ずるときは則ち戦いの自ら敗れ、攻の自ら毀る者なり、と。孫子の此の篇蓋し此の意に本づく。覇兵の法は管仲を最大と為す。故に孫子の兵法多く、管子に依る学者宜しく參攷(参考)すべし。第とは順序を紀するの目。一とは數を擧ぐるの首なり。

○恩田仰岳「孫子纂注」:計は算なり。出師の初、先づ彼我の優劣を計算し、必勝を料りて而る後に動く。

孫子の兵法:計:始計:曹操孟徳:魏武帝註孫子:孫子十家註○曹公(曹操):計とは、将を選び、敵を量り、地を度り、卒を料り、遠近険易を廟堂に於いて計るなり。

孫子の兵法:計:始計:杜牧:孫子十家註○杜牧:計は算なり。曰く、算は何れの事か計る。曰く、下の五事は所謂、道・天・地・将・法なり。廟堂の上に於いて、先ず彼我の五事を以て算し、優劣を計り、然る後に勝負定む。勝負既に定むれば、然る後に師を興し、衆を動かす。兵を用いるの道は、此の五事より先は莫し。故に著し篇首と為すのみ。

○王皙:計とは、主将・天地・法令・兵衆・士卒・賞罰を計ることを謂うなり。

○張預:管子曰く、計とは先ず内に於いて定め、而る後に兵を境に出す。故に兵を用いるの道は計を以て首と為すなり。或ひと曰く、兵は敵に臨みて宜しきを制するを貴ぶ。曹公、廟堂に於いて計るを謂うのは何ぞや。曰く、将の賢愚、敵の強弱、地の遠近、兵の衆寡なり。安くんぞ先ず及びて之を計らざるを得んや。両軍相臨み、變に動き相應ずれば、則、将の裁く所在り。以て隃度る可きに非ずなり。

○李筌:計とは、兵の上なり。太乙・遁甲とは、先ず計り、神を以て徳を宮に加え、以て主客を成敗し斷ず。故に孫子、兵を論じ亦計を以て篇首と為す。


⇒このページのTopに移動する

⇒トップページに移動する

⇒計篇 全文に移動する




人気ブログランキングへ