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孫子研究ブログです。孫子兵法は別名『孫子兵経』、『SUNTZU』、『The Art of WAR』ともよばれています。ナポレオンや毛沢東も愛読していました。注釈者には曹操、杜牧、山鹿素行、荻生徂徠、新井白石、吉田松陰、等の有名人も多いです。とにかく深いです。

孫子 兵法 大研究!トップ⇒本文注釈:孫子 兵法 大研究!
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2012-06-08 (金) | 編集 |
孫子 兵法 大研究!

本文注釈:孫子 兵法 大研究!

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『実にして之れに備え、』:本文注釈

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この文の解釈にも諸説ある。
 ①我軍を充実させて敵に備えて
 ②我軍を充実させて敵に備えさせて(備わしむ)
 ③敵に我軍が充実していると思わせて(本当は充実していないのだが)敵に備えさせ(備わしむ) 
 ④敵軍が充実していれば我軍が敵軍に備え 
などが解釈として主要なものである。この句の後に続くものが「強にして之れを避く」であり、この「実にして之れに備え、」の句と連続して解釈する方法と、この句単独で解釈する方法と二種類ある。

実-①中身がいっぱいある。十分にみちる。いっぱいにみたす。②内容。中身。③草木のみ(がみのる)。④まこと。まごころ。心がこもっていていつわりがない。⑤ほんとう。ありのまま。㋐血がつながっている。㋑まことに。非常に。げに。【解字】形声。「宀」(=やね)+音符「周」(=いっぱい)の変形+「貝」(=財貨)。家の中を財貨でみたす意。

備-①前もって用意する。そなえる。そなえ。②不足なくそろっている。そなわる。③つぶさに。ことごとく。④「吉備国」の略。【解字】形声。右半部は音符で、矢をそろえて入れたえびらの象形。「人」を加えて、事故にそなえて用意しておく控えの人の意。



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○天野孫子:実而備之-われの兵力など充実しているが、充実していないようにみせて敵に備える。『正義』(関重秀『七書正義』)は「吾虚に非ずして猶、益々之に備へて、敵を詭るに弱虚を以てす」と。これは「能而示之不能、用而示之不用」と同意。次の句もこれと同意。一説に「実にして之を備へしむ」と読んで、味方の兵力など充実していない(虚)のに、充実しているようにして敵に備えをなさしめると。『直解』は鄭友賢の説を引いて「能而之不能より下の十四句に至るまで、俱に是れ詭道なり。但、実而備之の句、解するに彼の軍既に実ならば、我当に預め備ふべきを以てす。強而避之の句、解するに彼の勢若し強ならば、我当に引きて避くべきを以てす。然るが如きは則ち是れ正道にして詭道に非ず。当に解して、我軍本虚なり、反りて詭くに実を以てして、之(彼)をして備へしめ、我勢本弱なり、反りて詭くに強を以てして、之をして避けしむと作すべし」と。これに対し「実ならば之に備ふ」と読んで敵の実に備えるこそ詭道であると。『諺義』は「案ずるに鄭友賢の説未だ審かならず。実ならば之に備へ、強ならば之を避くは、則ち是れ詭道なり。実なりとも強なりとも義のうつべきあらんには、かかりてこれと戦ひこれをうつは正道に似たりといへども、力を量らずしてはたらく時は必敗の道なり。この故に或は備へて其の位を見、或は当座の鋭気を避けて、これを逃れ、終りにこれをうつは皆詭道なり」と。敵が実の時、これを味方が攻撃しないのを詭道と言えようか。またそれを詭道と関係させるために、本文にない「終りにこれを撃つ」を取り出すのは恣意的である。『国字解』も「詭道と云ふは強ちにいつはりだますことばかりに非ず。千変万化して、敵にはからせぬことを云ふなれば、正道の戦も、千変万化の一つなり。或は正道を用ひ或は表裡を用ひるこそ、真の詭道なれ」と。実際の戦闘行為についてはなにが詭道かは見分けがたいが、しかしここでは詭道を理論的に説くものであるから、他者の受けとり方を考慮外にして、論者は詭道を詭道として論じていると解さなければならない。『国字解』は実際と理論とを混同している。

○フランシス・ワン孫子:一、「実にして之に備う」  「実なれば、而(すなわ)ち之に備う」とも読む。何れにせよ、「実に対しては之に備う」の意である。曹操は「敵、洽(あまね)く実すれば、須らく之に備うべし」と註し、梅堯臣は「彼れ実なれば則ち備えざる可からざるなり」と註する。「実」とは「虚」に対する言であり、敵国或いは敵軍の軍事力・兵勢ともに充実して乗ずべき虚隙なき場合を言う。張豫は「敵人の兵勢、既に実なれば、即ち我は当(まさ)に勝つ可からざるの計(形篇)を為して以て之を待つべく、軽挙すること勿れとなり」と註している。諺にも「待つことを知るは成功の秘訣」とあるが、要するに待つことも詭道の一つである。

○大橋孫子:実にして之に備え-敵の戦力が充実していたら、一歩退いてこれに備える

○武岡孫子:実なるもこれに備え-敵の戦力よりこちらが充実しているのに、わざとかなわんという態勢をする

○守屋孫子:充実している敵には退いて備えを固め、

○田所孫子:実而備之とは、相手国の軍備が充実しているときには、こちらも十分備えていて動かないこと。

○重沢孫子:我が部隊の充実ぶりを誇大宣伝することによって、敵に必要以上の防備をさせ、その戦力を消耗させる。

○著者不明孫子:【實】 敵軍の戦力が充実している。

○孫子諺義:實と云ふは、彼れが兵勢實にしてみだれざる也。或は彼れ大軍なるか堅城を守るか、小勢なりといへども地形をかたどるか、いづれに(か)實なる處あつて之れを打つ可きの虚なきときは、我れ備設けてかたくいたし之れを守る可し。その内に彼れが虚の出來るをまちて之れを打つ可き也。實なる敵を急にうたんとせば必ず利あるべからず。備と云ふは、豫じめ辨ずる也と註す。あらかじめ謀(はかりごと)を設くること也。周の單穆公(周代の邑の名、周の成王の少子を封じ邑名を姓とす)云はく、備未だ至らずして之れを設くる有るなりと。楚の遠啓彊(春秋時代楚の大夫、春秋昭公五年に出づ)云はく、苟(いやしく)も備有らば何の故にか不可ならんと。呉の蹶由(春秋時代、呉王餘昧の弟なり、この句春秋昭公五年に出づ)云はく、難易に備有らば吉と謂ふ可しと。范蠡(春秋時代、越王勾踐に仕ふ、深謀二十年遂に呉を滅す)審に備ふれば則以て戦ふ可しと云ふ、皆古來備を重んずる也。楚の倚相(春秋時代、楚の史官)謂ふ、呉人甲輯(あつ)め兵聚まる、之れに備ふるに如かずと云ふ、これ實なるときは之れに備ふる也。

○孫子国字解:『實にして之に備へ、強くして之を避け』 實するとはみちたることなり。敵の備法制整りて、すきまなく油断なく、打つべき圖の見えぬことなり。かやうなる敵ならば、味方も備を設けて、時の變を待べしとなり。備を設るとは、敵の討んとばかり思はず、味方にうたるべき虚のなき様に、油断なく守りて、變を待ことなり。強と云は勢ひの強きことなり。或は猛将の勝ちに乗りたる勢、或は勇将の會稽の恥を雪んとする勢、或は陣を列する上にても、将勇猛にして、兵馬精けたる備をば、是をよけさけて鋒を爭はず、其勢のぬけたる圖を打べしと云ことなり。一説に、此二句を、實してこれに備へ、強くしてこれを避くと讀む時は、詭道に非ず、正道なり。實してこれを備へしめ、強くしてこれを避けしめとよむべし。其意は、味方の備もと實せざるを實したる様に見せかけて、用もなき處まで敵に用心させ、敵にちぢみを付けて、聊爾(れうじ(りょうじ))[①かりそめなこと。思慮が足りないこと。②粗相。失礼。粗忽(そこつ。)]にかからせぬ様にし、味方の勢弱けれども、強き様にもてなして、敵によけさする様にする、是詭道なりと云説あり。尤面白き説なれども、前段に斷はる如く、詭道と云は、強ちにいつはりだますことばかりに非ず。千變萬化して、敵にはからせぬことを云なれば、正道の戦も、千變萬化の一つなり。或は正道を用ひ、或は表裡を用るこそ、眞の詭道なれ。然れば古來の説の如く、實してこれに備へ、強くしてこれを避くとよみて、なるほど孫子が本意に違ふべからず。

○曹公:敵の治實なれば、須らく之に備うべし。

○李筌:敵の實に備う。蜀将關羽魏の樊城を圍まんと欲し、呉将呂蒙其の後を襲うことを懼るれば、乃ち多くの備うる兵留まりて荊州を守らんとす。蒙 其の旨を知る。遂に之を詐るに疾きを以てす。羽 乃ち其の備うる兵を撤去す。遂に蒙 取る所を為す。而して荊州呉に没す。則其の義なり。

○杜牧:對壘[戦場で、敵に対して陣をしくこと。敵と相対すること。]相持つ。虚実を論ぜず。常に須らく備えを為すべし。此の言の居くところ常に事無し。鄰(となり)に封じ境を接して、敵若し政を修め實を治めれば、上下相愛す。賞罰明らかに信なりて、士卒精錬なれば即ち須らく之に備うべし。兵交を待ちて然る後備えを為さず。

○陳皡:敵若し動かず、完(まった)く實にして謹んで備うれば、則我れ亦自ずから實を以て敵に備うなり。

○梅堯臣:彼れ實なれば則備わざる可からず。

○王晳:彼れ将に以て吾の不備を撃つ有らんとす。

○何氏:彼の敵但(ただ)其の實を見るに未だ其の虚の形を見ざれば、則當に力を蓄えて之に備うべし。

○張預:經に曰く、之に角れて有餘不足の處を知る。有餘は則實なり。不足は則虚なり。言うこころは敵人の兵勢、既ち実なれば、則ち我は當に勝つ可からざるの計を為して以て之を待つべく、軽挙すること勿れとなり。李靖軍鏡に曰く、其の虚を觀れば則ち進み、其の實を見れば則ち止まる。


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○金谷孫子:[敵が]充実しているときはそれに防備し、

○浅野孫子:敵の戦力が充実しているときは、敵の攻撃に対して防備を固め、

○町田孫子:充実しているものにはこちらも備え、

○天野孫子:味方が充実しておりながら充実していないように敵に備えたり、

○フランシス・ワン孫子:敵が戦力を集中させた時は対戦の準備をなせ。

○大橋孫子:味方の戦力が充実しているのに慎重策をとり、

○武岡孫子:味方が万全の態勢でいるのにスキだらけの様子をしてみせる。

○著者不明孫子:充実していれば守備を固め、

○学習研究社孫子:敵が充実している時は、それに備えることを心がける。

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2012-06-04 (月) | 編集 |
孫子 兵法 大研究!

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『乱にして之れを取り、』:本文注釈

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この句は、前句の「利にして之を誘い」とセットで解釈される場合と、この句のみの、単独で解釈される場合の二パターンがある。また、諸注をみてもわかるように、「乱れる」のは自分側、または相手側のこれもまた二パターンの解釈がある。また、「之」の解釈も「敵」とするものや「勝ち」または、「貨」と解釈する注釈者もいる。これは、「孫子」の本文の中に同じような意味の文(そう解釈され得る文も含む)が各々存在するためである。また「利にして之を誘い、乱にして之を取る」の文の前は「能なるも之に不能を示し、用なるも之に不用を示す」、「近くとも之に遠きを示し、遠くとも之に近きを示す」と二つの文がつながって形成されており、この文も同じように「利にして之を誘い、乱にして之を取る」とセットで解釈すべきだという注釈者も多い。しかし、この文単独でも十分「詭道」を表わしている文として有効なものであるため、単独での解釈をとる注釈者も少なくない。セットで解釈する場合は、「敵を誘い込んだ結果、利につられて隊がバラバラになったところを我が軍が撃つ」となり、この利で誘い込む策を適用する敵軍の状態として理想なのは、たとえば士気が高く、攻撃精神旺盛の者や、金銭を欲する者が多い場合であろう。このように敵の状態如何によって「詭道」の策も変化するものである(「呉子」に若干詳しい。)。
「乱」とは『左伝』に「兵(いくさ)外に作(おこ)るを寇(こう)となし、内に作るを乱となす」とあり、内乱のことをさす。この本文では、敵か味方かいずれかの軍の内側が乱れている(または、わざと乱れたふりをしている)ことを指している。

乱-①みだれる。㋐もつれる。秩序なく、いりまじる。㋑世の中のみだれ。②おさめる。とりまとめる。古代中国の音楽や韻文の末章を「乱」というのはこの意。「濫」に通じ、「みだりに」「むやみに」の意に用いる。【解字】会意。「亂」の左半部は、みだれた糸巻きの上下から両手(「爫」と「又」)を添えた形。「乚」(=上から押さえる)を加えて、糸のもつれをととのえなおす意。②が原義だが、逆の意味に転じて、みだれる意。「乱」はその略字。

取-手ににぎる。自分のものにする。えらびとる。【解字】もと、又部6画。会意。「耳」+「又」(=手)。獲物の耳を手でつかむ意。



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○天野孫子:敵を混乱させてたやすく敵から何かを奪い取る。何を奪い取るかは、その場合によって異なる。一説に「乱」をわれを乱れたるごとくいつわるとして、張預は「詐りて紛乱を為し、誘ひて之を取る」と。この場合「乱」と「取之」との間に飛躍がある。この解について『国字解』は「手前を乱して敵をかからせ是を打ち取ると云ふ説あり。是は上の利而誘之と云ふ意なり」と。また一説に「乱れて之を取る」と読み、杜牧は「敵、昏乱あれば、以て乗じて之を取る可し」と。敵の乱れに乗ずるは当然のことであって、ここには詭道がない。『略解』は「乱而取之は敵をみだして取るの義。一説に我を乱す事とす、又或は其国固より乱るる事とするは共に非なり」と。

○守屋孫子:混乱させて突き崩す。

○田所孫子:乱而取之とは、相手国の準備態勢を攪乱して、それにつけ入ること。

○重沢孫子:我が部隊内に紛乱があるように宣伝し、敵を油断させて敵陣を破り、物資を奪い取る。

○フランシス・ワン孫子:一、「乱して之を取る」 李筌が、「敵、利を貪れば必ず乱る」と註せる如く、一般には、本句は前句と併せて読まれ、「利して誘う」ことによって泯乱(びんらん)(乱脈)に陥った敵、若しくは軽率の行動に出た敵を攻取するの意と解されている。反戦工作・分裂工作・内乱の煽動・同盟国(友好国)の離間工作等の如きは、すべて、その関係者を「利して誘う」ことを以て出発点とするものである。 
 以上に対し、「乱して之を取る」は前句とは別の独立句とする者も多い。この場合は二通りの解釈がある。その一つは、敵を混乱に陥れて攻取するの意とすることは同じであるが、「乱する」手段は、暗殺から敵の指揮中枢を破壊するまでの強行手段も含むとするものである。他の一つは、仏訳の如き解釈である。この場合は、「乱する」のは敵ではなく我が方である。即ち、我が方が混乱した状況を故意に作為し、それによって釣り出された敵を攻取せよ、の意となる。張豫は「詐(いつわ)りて紛乱せるを為し、誘いて之を取る」と註している。これも、「利して誘う」一手段であるが、敵の不用意な攻撃或いは行動を誘引するには頗る有効であり、現代でも、ゲリラや進退の敏速な機甲部隊が用いて、屢々(しばしば)成功をおさめている。
 なお、この我が方が混乱した有様を示す方略は、敵の真意を探り或いは暴露せしむるものとしても有効であり、政・戦略場面から戦術・戦闘に至る各種の段階に於て、広く用いられている。

○諺義:彼れと我れと相對するとき、彼れ備なくしてみだれば、乃ちすすんでこれを打つべし。亂と云ふは、兵士騒動し行列正しからず、陣(底本は陳に作る。陳陣通じて用ひ、底本には各處に兩用しあるも、今明かに素行の文と思はるるものは陣の字に統一せり)勢整はざるを云へり。亂に虚實あり、彼れわざと引きかけんためにみだるることあり。ここは眞の亂を云ふ也。或は陣中に火事出來し、又は馬をとりはなし、或はうらぎりのもの出來、或は何事となく陣中さわぎ立つことあるもの也。その圖をのがさず之れを取る可き也。取ると云ふは、心安くせめとるを取ると云へり。或は云ふ、つねづね其の作法をきいてみだりならんをばおそうてこれをとるべき也。張預云はく、春秋の法、凡そ取ると書ける者は易きを言ふ也。魯師[寺阝](じ)を取る、是れ也。或ひと云はく、敵利を貪れば必ず亂ると也と。是れ利して之れを誘くの句と、連續して見る也。李筌は之れに從ふ。問對亦此れ二句を以て一串と為す。

○李筌:敵利を貪れば必ず乱るなり。秦王姚興禿髪[イ辱]檀を征く。悉く部内牛羊驅ける。野に散放し、秦人縦にし虜掠める。秦人利を得る。既に行列無し。[イ辱]檀の陰十将に分つ。掩(おお)いて之を撃つ。秦人大敗す。首を斬るは七千餘級。亂にして之を取るの義なり。

○杜牧:敵、昏亂あれば、以て乗じて之を取る可し。傳に曰く、弱きを兼ね昧(くら)きを攻める。亂れを取り亡ぶを侮(あなど)る。武之れ善く經するなり。

○賈林:我れ姦智をして之れを亂れ令む。亂れ候いて之れを取るなり。

○梅堯臣:彼れ亂るれば則乗じて之れを取る。

○王晳:亂とは節制無しと為す。取るとは易しを言うなり。

○張預:詐りて紛亂を為し、誘いて之れを取る。呉越相攻め、呉罪人三千を以て、整わざるを示して越を誘う。罪人或は奔り或は止まる。越人之れに争う。呉為し敗るる所の若し是れなり。敵亂れて後取るを言う者は之れなり。春秋の法、凡そ取ると書ける者は易きを言ふ也。魯師[寺阝](じ)を取る、是れ也。


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○金谷孫子:[敵が]混乱しているときはそれを奪い取り、

○浅野孫子:敵が混乱しているときは、その隙を衝いて攻撃しては敵軍の戦力を奪い取り、

○町田孫子:混乱しているものは一気に奪い取り、

○天野孫子:敵を混乱させて敵から奪い取ったり、

○フランシス・ワン孫子:混乱した様(さま)を示して之を撃て。

○大橋孫子:敵を混乱させて勝ちをとり、

○武岡孫子:敵を混乱させておいて攻める。

○著者不明孫子:相手が乱れていればつけ込んで奪い取り、

○学習研究社孫子:敵が乱れている時は、機を移さずに攻撃する。

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2012-06-03 (日) | 編集 |
孫子 兵法 大研究!

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『故に利にして之れを誘い、』:本文注釈

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誘-①先に立って説きすすめる。先導する。いざなう。②さそい出す。おびきよせる。③それが原因となって、ひきおこす。【解字】形声。「言」+音符「秀」(=穂が出る。先に立つ)。自分が先に立って言葉で人をみちびく意。

竹簡孫子以外は『利にして之れを誘い』につくる。

 ここでの「利」は「利益」の意。これは偽りの状態をつくりあげ、自分側を有利な状態に導く戦法である。この文意に近いと思われる言葉で、虚実篇の「故に善く敵を動かす者は、これに形すれば敵必ずこれに従い、これに予(あた)うれば敵必ずこれを取る。利を以てこれを動かし、卒を以てこれを待つ。」や、軍争篇の「故に兵は詐を以て立ち、利を以て動き、分合を以て変を為す者なり。」などがある。いずれにせよ、この敵を誘い込む戦法は、消極的な戦法ではなく、自分が能動的になって相手を撃破せんとする場合に行うものである戦法であることに疑いはない。この積極的に相手を打ち破る場合の戦法として一例をあげると、虚実篇に「故に我れ戦わんと欲すれば、敵 塁を高くし溝を深くすと雖も、我れと戦わざるを得ざる者は、其の必ず救う所を攻むればなり。」と見え、また九地篇には「先ず其の愛する所を奪わば、則ち聽かん。」と見える。
この文の意を「敵に利益を見せて、誘い込んで撃つ」と解釈することは、狭義であろう。なぜなら、「害をみせてこちらの思う地点に相手を誘い込む」という戦法も考えられるからである。つまり、ここでの「利」の意味は、「自軍にとっての有利」となり、よってこの文の意味は、「敵が有利と感じるほうに誘い込む」というよりは、「自軍にとって有利であるように敵を誘い込む」のほうがより適当と考えられる。
よってこの文の意は「それゆえ、敵を「利」に固執させておいて、敵を誘い込み、」となるか、または、「それゆえ、自分を有利な状態にしておいて、敵を誘い込み、」となる。後者の意味は自分の「利」を以て動き、相手を誘い込む、ということである。この誘い込む戦法は、どちらにせよ現状を自分の有利な状況にもっていくことが目的であるから、後者の意味をおさえておけばこの戦法の基本は理解できていることになる。しかしながら奥深いと思われるのは前者の意である。人は「利」に固執する生き物であるから、これを戦場で応用すれば、「利」の適切な扱いは「相手の死」につながり「自軍の勝利」に繋がるということである。逆を言えば、「利」は自分をも殺すということである。「利」を生むことは敵に逆用されれば直ちに自分の「害」になるということである。しかしながら、このリスクを負わねば敵に勝つこともできないのである。また、相手に仕掛けられたときは見破り踏みとどまらねば「死」が待っているということである。それは自分にとって有利な状況にあると思っている矢先に「圧倒的不利」につながるのだから、将はよくよくこのことを念頭にいれておき、常に不敗の地に自軍をおくように心がけねばならないだろう。
ナポレオンは、人を動かすには「利益」と「恐怖」がもっとも有効であると言っている。確かに「利益」「恐怖」「不安」などは最も人に作用する要素であることは間違いない。しかし、「恐怖」「不安」のあとには人々は一致団結して戦うことがありえるのである。なぜなら「恐怖」などの苦難の経験のあとには仲間意識が芽生えやすいのである。一時的に敵を追い込み、誘導するといった点では大いに有効であろうが、時と場所での使い方を間違えると「恐怖」は「勇気」へと変わり、逆にこちらが追い込まれるということも考えられるのである。逆に「利益」は人をおぼれさせるにはもってこいである。人はいったん手に入れた利益は手離そうとはしない。手離すことは「恐怖」へと直結する。故に、目の前に大金を積まれても動じない、目先の大勝利にも目を奪われない、安易に行動に移すことを許さない懐疑精神が必要なのである。


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○金谷孫子:利にして…-以下の句は上文と句形が変わり、解釈に異説が多い。「而」の上の「利」「乱」などの字をすべて敵方に属するものとみて、統一的に解釈することにした。

○天野孫子:敵に小利を与えて敵を味方の思うところにさそい出す。『諺義』は「利を与へて、彼を引き出し、あざむきうつなり。誘ふと云ふは、いつはりてさそひ出す心なり。彼を引き出すには利を与ふるにあるなり。小利をかれに与へて大利をうるの心を以て本とするなり」と。

○フランシス・ワン孫子:一、「利して之を誘う」 これは、いつの時代いずれの国家に於ても、新しき手段として常に用いられる所である。梅堯臣は「彼れ利を貪らば、則ち貨を以て之を誘え」と註しているが、以て、その本質を知るべきであろう。

○守屋孫子:有利と思わせて誘い出し、

○田所孫子:利而誘之とは、相手方を如何にも有利なように思わせて、こちらの思う壺に誘いこんで来ること。

○重沢孫子:敵に対して、いま我を攻撃すれば有利であると判断するようにしむけ、実は敵を引き寄せて打撃を与える。

○著者不明孫子:【利而誘之】敵が有利であれば、それをえさにして敵をおびき出す(敵が誘いに乗って動きだしたところを撃つ)。諸注みな、利によって敵を誘惑する、敵に有利なように見せかけて誘いだす、などの意味に解するが、それでは「利而」の解釈が以下の諸条と照応しない。

○諺義:利を與へて彼れを引出し、あざむきをうつ也。誘と云ふは、いつはりてさそひ出す心也。彼れを引出すには利を與ふるにある也。小利をかれに與へて大利をうるの心を以て本とする也。利をあたふるとは、あへしらひ(應答)勢を出して、引きかくる也。或は小(すこ)し退き、或はわざと兵をみだし、彼れに利を與ふ、或はつねに財利を與へて、かれをあざむくの心もあり。

○孫子国字解:『利して之を誘(あざふ)き、亂(みだ)して之を取る』 『利して之を誘き、亂(みだ)れて之を取る』  利とは、敵の好むことを云なり。或は財寶米粮を取らせ、或は國郡を與へ、或は一旦の勝利を與へなどすることなり。誘くとは、だまし引出すことなり。是は城に引こもり、或は要害を固めて、出ざる敵或は戰まじき圖を守りて、戰はざる敵などを、彼れが好むことにて惑はして、是を引出すことなり。亂而取之とは、てだてを以て敵の亂れぬ備をみだして、是を打取るなり。むかし秦の苻堅(ふけん)と晉の謝玄、淝水(ひすい)と云川を夾(はさ)んて陣を取る。謝玄使を遣はして、少し備をあとへくり玉はば淝水を濟て合戦を仕らん。かやうに川を夾んで對陣しては、せんもなきこと也と云、苻堅尤とて備をあとへくる。其意謝玄が軍勢の川を半ば濟る所を、討んと思てなり。半渡を撃つと云は、古の兵法なれども、苻堅の軍兵二十萬にあまる大軍を、あとへくらんとせしかば、備忽亂れたり。謝玄兼て苻堅が半渡を撃つの計を用んとて、備の亂るるをは思ひつくまじと察して、右の如く申し遣したるに、案の如くてだてにのりたるゆへ、一戦にてこれを敗る。これ亂而取之のはかりごと也。或は火をかけ、馬を切てはなしなどして、敵陣を亂す計は、其品いくらもあるべし。また手前を亂して敵をかからせ、是を打取ると云説あり。是は上の利而誘之と云意なり。亂而取之と云とは、少しとをき説なり。又本文を、みだれてこれを取とよみて、敵國の政道亂れて、埒もなきと知らば、速にこれを攻取り、或は城中陣中の法の亂れたるを、亂れに乗じて攻落し、或は備の亂れ、足並の定まらぬを討取る類も、亂れて取之なり。みだれて、みだして、兩點何れも用べきなり。或説に、みだしてと讀時は、此方より計を以て亂すことゆへ、詭道なり。みだれてと讀時は、彼れが自分と亂れたるを攻取るゆへ、正道にて、詭道に非ず。此段は、兵の詭道を説たる處なれば、みだしてとよむ説、然るべしと云ものもあれども、最前にことはる如く、詭道と云は、強ちにいつはりたばかるばかりに非ず。千變萬化して、一定の格を守らぬことなれば、兩説ともに用べし。

○杜牧:趙将李牧大に畜牧を縦にす。人衆野に満つ。匈奴小く入る。佯北は勝たず。數千人を以て之を委ねる。単于之を聞きて大いに喜び、衆を率いて大いに至る。牧 多く奇陳を為す。左右夾みて撃つ。大いに破りて匈奴十餘萬騎を殺すなり。

○賈林:利を以て之を動かす。動けば而して形有り。我れ形に因りて勝ちを制す所以なり。

○梅堯臣:彼 利を貪れば則貨を以て之を誘う。

○何氏:利にして之を誘うとは、赤眉[せきび‐の‐らん【赤眉の乱】 前漢を倒した新朝の王莽(おうもう)の失政による社会の混乱に乗じて、西暦18年、山東瑯琊(ろうや)の樊崇(はんすう)が起こした農民反乱。王莽の軍と区別するために眉を赤く染めたという。27年、劉秀(後漢の光武帝)によって平定された。]輜重を委ねて鄧禹を餌にするが如し是なり。

○張預:示すは小利を以て、誘いて之に克つ。楚人の絞を伐つは、莫敖曰く、絞小にして軽し、請う采樵する者扞むこと無かれ、以て之に應じ、是に於いて絞人楚三十人を獲りて、明日絞人争い出ると、楚の役徒山中に驅けて、楚人伏兵を山の下に設けて大いに之を敗るが若し是なり。


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○金谷孫子:[敵が]利を求めているときはそれを誘い出し、

○浅野孫子:こうした、いつも敵に偽りの状態を示す方法によって、敵が利益を欲しがっているときは、その利益を餌に敵軍を誘い出し、

○町田孫子:利にさといものには誘いの手をのばし、

○天野孫子:敵に利を与えて誘い出したり、

○フランシス・ワン孫子:餌を与えて敵を罠にかけよ。

○大橋孫子:また利益を見せて敵を誘い出し、

○武岡孫子:敵に有利な要所をわざと取らせて誘う。

○著者不明孫子:相手が有利であれば誘い出し、

○学習研究社孫子:敵が有利な条件にある時は、敵をこちらの有利なように誘いだし、

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